決して不可欠なものというわけではないんですね。

　◇　◆　◇　◆　◇

　一番驚いたのは、最後の「現在、グッチ家はグッチの経営に一切関わっていない」という字幕だったかもしれません。「エッ！ そうなの？ そんなことあり得るの？！」と意外でした。

　でもホント、それ以外は至って驚きがないと言うか、とても普通なお話でした。いや、もちろん最後は殺人事件が描かれるのですけど。そして、それこそがグッチ家の経営権からの隔絶を決定的にしたのだと思われますけど。何と言うか、事実って、やっぱ小説ほど奇じゃないんだなというのが観終えた率直な感想でした。

　結局のところ、殺人事件の首謀者であるパトリツィア（レディー・ガガ）を徹底的な悪として描かない、との選択をしたところが本作の肝だったのだと思います。でもそうであれば、グッチ家から経営権を簒奪したアラブの資本家グループをこそ、悪辣な集団に描くべきではなかったか。現実問題として、今でもグッチ・ブランドは上手に運営されている訳ですから、この視点も取りにくかったことでしょう。被害者であるマウリツィオ（アダム・ドライバー）にすべてをおっ被せることもやりにくいしね。

　いろんな方面に配慮を重ねた末の作品なのだろうという気がしました。そうでもしなけりゃ映画にできなかったでしょうから、作り手側にも同情はしますけど。

75／100(22/1/30見)