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[コメント] ザ・メニュー(2022/米)

映画以外では起こり得ない、観客を騙すための特殊な設定。でも物語世界を小出しに提示していく演出手腕は十分に不気味。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







****要注意!いきなりネタバレ****

 集団自決(客をも巻き込んでいるが)という事象は、戦時中のわが国でも実際に起きた事ですが、やっぱりよく分からないです。この映画で描かれるように、死を美化し、犠牲に殉じることを尊ぶ精神性だったのでしょうか。そうかもしれませんが、それだけではない気もします。それはともかく。

 主演の女優さん(アニヤ・テイラー・ジョイ)が、表面的な飾りや虚仮おどしの権威に惑わされない、確固とした自己を持つ女性、「マーゴ」を好演。自身の恐怖と闘う場面なんかもあり、好感度も高い(煙草を吸うのは・・・)。健気な(?)女性が一人だけ生き残るというのも、ホラー映画の常道の内でしょう。でも、彼女の示した信念に、カルトの歪んだ価値観が勝ったと描かれているようで、僕なんかにはアウトな作品でした。

 「お会計」シーンは、スローヴィク(シェフ=レイフ・ファインズ)の心変りを表すシーンなのかと思いました。だって、自分たちも全員死ぬつもりの店側が、一人残らず殺すつもりの客たちから勘定をとる必然性はまったくないですから。その直前の「マーゴ」の知性と勇気にあふれた行動がシェフの心の奥まで届き、彼の中の何かを動かしたのだろう、みたいな。これもご都合と言えばご都合的な考え方かもしれませんが、もはや事態を打開するのは彼の心変わりぐらいしかないだろうと。事態に打開されてほしかったわけですな。結局のところ、物語展開の迷彩として機能しただけ。くだらねえなあと思わされました。

 作り手の側が「カタストロフを描く魅力」とでも言うべきものに捕らわれすぎてしまった作品のように思います。「マーゴ」がスローヴィクに似たようなことを言うシーンが映画の中にありました。観客の求めるものは、必ずしもカタストロフではないのではないか? そんなところに気づいてもらえないもどかしさとでも言いましょうか。もちろんカタストロフの方を求める観客もいるのでしょう。見解の相違というヤツです。映画を観ると、つまるところ、自分がどういう人間かが分かるのですな。映画には人の生き様を見ろと言ったのは岡山の市井人、松田完一さんですが、それって自分の生き様を見ているのと同じことなのかもしれません。なんちって。

 梅干しは向こうでもumeboshiなんですな。発音はしづらそうでしたけど。

 「コロナのときも潰させなかったろ!」やっぱ終わってないの日本だけなんじゃん。情けね。

80/100(22/11/20見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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