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[コメント] ゴッドファーザーPARTIII(1990/米)

本作は終始フレドの亡霊への贖罪というテーマが貫かれているが、それはやがてマイケルに憑依し、そして映画をも滅ぼすだろう。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 例えば冒頭、バチカンから勲位みたいなものをマイケルが授かるシーンで、司教さんが唱えるお経(ではないが、なんつーの?)とオーバーラップし、実兄フレドが釣りのとき唱えていたマリア様へのお祈りをマイケルが思い出して、兄を殺した罪業を振り返る。印象的ではあるが、本来このお祈りは、フレドがアンソニー(マイケルの子)にだけ教えたものなので、マイケルが知ってるはずはない。こういうのはつまり、小手先の演出なんだよね。

 伯父の死は、マイケルの二人の子(アンソニーとメアリー)にとっても衝撃だったはずだが、少なくともそれから十数年が経ち、日常が積み重ねられているはずなのに、ある日突然「忌まわしい記憶があるから」とか言って父の仕事を受け継ぐことを拒否するアンソニーの図、とか、従兄弟とはいえ十数年ぶりにあった男(ビンセント)に伯父の死の真相を尋ねるメラニーの図、とか、いかにもとってつけた感じは否めない。つまり、今までその問題を自分の中でどう処理してきたのか、という部分が描かれていない。これは、現実に生きる人間としては有り得ない。

 シチリアの大司教にマイケルが告解するシーンも、キリスト教体験を持たない人間からすると、もう少し大司教さんの人間的包容力みたいなものを見せてくれないと、マイケルは懺悔したくて懺悔したくて仕方なかった男、というふうにしか見えないのだ。ある意味人間的ではあるけれど、悪党としては、ふーん、その程度の奴か、と侮蔑の気持ちがわいてしまう。だったら、殺さなければよかったのに、と。

 ラストも、マイケルは兄殺しの罰として、実の娘(メアリー)を失うことになるのだが、なんつーか、こんな話にちっともリアリティを感じない。シーンとしても、なんでメアリーが撃たれてマイケルが助かるのか分からないし、ビンセントが一発で暗殺者をしとめるのも出来すぎ。展開がもたもたして、はっきり言って下手くそ。マイケルが大絶叫してるのも、演技だな、と感じてしらける。前作まではサスペンスというか、気を持たせるのがわりと上手かったけど、なんかもう、どっちらけだよな。

 結局のところ、前作以降、よっぽど苦情を言われたのかどうか知らんけど、実兄殺しにこだわりすぎなんだよ。そんな昔のこと、誰も覚えてないってのに。自ら作り上げた物語の重みに、耐え切れず潰れてしまった悲しい作品。

75/100(05/01/2915年ぶり再見)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ナッシュ13[*]

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