[コメント] 裸の島(1960/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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瀬戸内の多島美ってのは私にはよく分からない。でも山々の連なりとか、空の雲とかは美しかった。特に雲の隙間から差す陽光とか。そういう意味では、映画的な喜びに満ちた作品ではある。乾いた土に水が滲み込むように、映画のメッセージがなんとなく見る者にも滲みわたる。
ただしこれはリアリズム追求型ではないんですよね。毎日あれだけの重労働をしていて乙羽信子みたいに華奢な農婦はいるわけないし(肌はもっと皺くちゃなはずだし)(でも殿山泰司はリアルだったな)、炎天下に作物へ水を遣るわけないし、どうせ斜面を利用するならあんなてっぺんの方ではなく、もっと下のほうを耕作すればいいし、そもそも大正末期や昭和初期ならともかく、テレビもロープウェイもある昭和30年代に好き好んでこんな不便な生活する人たちがいるわけない。
何と言うか、もしあれが自分に与えられた(あるいは自分で切り開いた)生活環境なら、やっぱりああやって生きていくしかないだろう、って感じかな。たぶん、人間って昔からそうやって生きてきたんだ。
ただね、「自分たちのやるべきこと」を寡黙に忠実にやり続ける人々を描いた映画ではあるけれど、じゃこの映画自身は、「映画が本来描くべきこと」をきちんと描いていると言えるのか、と思うわけ。虚構を用いるなとは言わない。出来事が虚構であることはかまわない。しかし、それを成立させている枠組みについては、きちんと現実に基づいたものであってほしい。ここで用いられる虚構は、本質的に「宇宙人が巨大な円盤に乗って攻めてきた」類と同じものでしょう?
だったら、変にもったいぶらずに、もっと物語に忠実であってほしいんだよ。いつも楽しませてくれとは言わないが、どこかに連れて行ってほしいわけ。いや、どこかに行った気にさせてほしいんだな。こっちだって金払って映画観てんだから。
75/100(04/07/28記)
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