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[コメント] フレンチ・カンカン(1955/仏)

圧巻とはこれ。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 バックステージ物のミュージカル映画という体裁を取っているが、日本で言ったら人情劇のような、人間感情の機微によく通じた作品。恋に一途な自分、というものにただ酔っているだけにすぎないアラブの王子様の気持ちもよくわかるし、平凡さの中に確かさを見出す分別を持ったパン屋の息子の生き方もわかる。そのポロ(パン屋の息子)の誠実さを理解し、評価しつつも、もっと自分には何か出来るんじゃないかと夢を見るニニ(フランソワーズ・アルヌール)の気持ちも、また自分に自信がないために、その夢を与えてくれた中心と連なっていることが支えとなり、不安を解消するものであるニニの心の有り様も、痛いほどわかる。そしてジャン・ギャバンのあの台詞。

 (二二が、ダングラール(ギャバン)が私のものになる、ことを踊る条件としたことに対し)「俺をカナリアか何かみたいに飼うつもりか? そんなものが長続きするもんか。しばらくしたら飽きて終りさ。俺にスリッパを履いて家にこもれと言うのか? 俺にそんなことができるか! スリッパなんぞ俺は絶対はかないぞ! いいかニニ、いい機会だから忠告してやろう! 恋人が欲しいか? ならアラブの王子のところへ行け! 夫が欲しいか? ではパン屋のポロのところだ。王子には、お前の望みをなんでもかなえるだけの金がある。パン屋のところには暖かい暖炉があって、その前で二人とも老いるまで平和に暮らせるだろうさ! 俺にはそのいずれもない! だいたい俺が王子の面か? 俺にできることは創り出すことだ! 俺はニニ、お前を創り上げた、ローラも創り上げた、エステルもそうだ! これからもそうする! いいかニニ、俺がなぜお前を惜しむか教えてやろう、待ちかねた客が怒って店の備品を壊すからじゃない。いい仕事をする仲間を失うからだ! それがわからなきゃお前はもう仲間じゃない、好きなようにしろ!」(←うろ覚え)

 ・・・この後、怒涛のカンカンへなだれ込む。客の反応と正面から対峙できず、独り楽屋で待つギャバン。その緊張した面持ちは、神の審判を待つ罪人のようでもある。やがて、客の歓声に手応えを感じ、成功を確信すると、ようやくリラックスしてリズムを取り始めるギャバン。こういう描写がまたいいのだ。

 型通りの人物ばかりが登場し、予測可能な物語が展開していく、という批判は、もしかしたら当っているのかもしれない。だがここには、ドラマにおけるある種の構成上の美しさ、言わばドラマ美がある。

85/100(08/02/10見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ジェリー[*] けにろん[*]

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