コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 男はつらいよ 翔んでる寅次郎(1979/日)

旅売人の寅はやはり生活が不規則なのか、旅先の医院で便秘薬を処方される。しかし、寅は国保とか入ってんのかしら。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 基本的に寅さんというシリーズは、男が女性に好意をきちんと言葉にして伝えると、その恋は成就する。そうでない場合は、結末は必ずしも描かれない。寅は、他人に助言する場合はそう言うので、少なくとも頭では理解しているはずだが、一度も言葉にしたことがない(多分これから先も)。また、女性が先に好意を口にした場合は成就されないという、まるで古事記みたいな、おそろしく原日本的な型をとどめた作品なのである。

 本作でもそれが踏襲されている。布施明の恋が成就するのは、ほとんどそれだけだと言っていい。そして寅はまた何も言わない。ただ、言わない理由は、ある程度描かれている。博による、「フラれてから、(惚れてたことに)気づくんじゃないかな」という理解を助ける親切なセリフもあったが、マドンナ=桃井かおりとは歳も離れており、始めの内は純粋にサポートしてあげているだけなのだ。これが、彼女自身が寅への好意を純粋に表すこともあって、少しずつ、というかいつの間にか、恋心に変わってしまったのである。

 最終的には、ひとみ(桃井)のセリフが良かった。「私はいま、邦夫さん(布施)の幸せを考えています。前回は、私のことしか考えていませんでした」。結婚ということの本質をついたセリフではないだろうか。そして、他人の幸せを第一に考えること、これを教えくれたのが寅さんだと言うのである。寅ファン冥利に尽きる、幸福な論理的帰結である。寅自身にとっては必ずしも幸福ではないのだが。

 正直、桃井かおりの雰囲気が寅さんの作品世界に合うか疑問だった。いつも通り、桃井は桃井であり、合ってなかったとも言える。だがこの、なんと言うか、見た目の斜めっぽさに似合わぬ純粋さ、みたいなものは、彼女でなければ表し得なかったかもしれない。その意味で桃井は本作の成立に不可欠だった。また、製作陣がこういうシチュエーションを用意できたことは、桃井にとっても良かったと思う。あと、布施の美声が聞けたお得感。

80/100(19/03/23見)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)Shrewd Fellow ぽんしゅう[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。