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[コメント] 南太平洋(1958/米)

唐突に歌詞を作りながら歌い出す不思議さについて自己言及するミュージカル映画を初めて見ました。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 お前の救出に6万ドルかかったと勝手な行動を司令から責められたルーサー(レイ・ウォルストン)は、なぜか嬉しそうな顔になって、子どもの頃叔父から言われた言葉を思い出したと答えます。「お前なんかに一銭の価値もない!」 ・・・こういう喜八というか正助というか寅次郎みたいな人が、アメリカにも昔はいたんでしょうね。戦争という誰にも一律に降りかかる悲惨な状況が、ある意味彼を解放するという構図も『拝啓天皇陛下様』の正助(渥美清が演じた)と一緒でした。

 のんびりした昔の映画で、ありもしないファンタジーな内容ですが、こういうあってもなくてもいいようなディテールが案外グッと来ます。確かに、メインストーリーは、フランス人初老男は自分の農園に自分を慈しむ若い女(誰でもいい)が来てほしいと勝手に夢想しているだけ、アメリカ人若年女も外の世界や未知の体験や恋に憧れているだけ、いまどきの映画にならえばこんなのは真の恋愛とは言えない、ということになろうかと思います。しかし、これぞ真の恋愛だと映画が言い張っている訳でもないし、映画は真の恋愛を描かなければいけない、ということでもないでしょう。

 もう一つ奇特な印象に残っているのは、肌の色の違う奴らを憎しめと子どもの頃から徹底して教えられた、と謳い上げる変な歌ですね。まあ、だから差別していいと言ってるわけではなく、根底の差別の気持ちがぬぐいがたいのだと開き直って告白している訳ですが。

75/100(15/03/01記)

(評価:★3)

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