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[コメント] ある殺し屋(1967/日)

あの大スター市川雷蔵が、こんな目立たぬ凡庸なオッサンだとは信じられん!と思う。17年前初めて見たときはその逆だった。
G31

古臭いものと新しい、つまり古臭さを軽蔑するもの。これらの対立の構図になっている。今のアーパー姉ちゃんなら、市川雷蔵演ずる殺し屋の渋み・ストイックさに惚れ惚れしちゃってもいいようなものだが、野川由美子は表面上はそう振る舞うものの、心は決してなびかない。古臭いものとは、権威的なものと言い換えてもいいだろう。殺し屋自身が「特攻の生き残り」という過去を引き摺る設定であることもそうだが、この作品は、徹底して権威的なるものを否定する構成を持つ。その結果、観客が確信を持って筋を追い難く、物語に緊張感が生まれている。もちろんカメラさんも意図的にシンメトリックな構図を多用しては緊張感を煽るのだ。そして、それが狙った上でのことかどうかはわからなかったが、雷蔵演じる凄腕の殺し屋の、まったくそうと思えぬ板に付かないぎこちなさが、この緊張感とよく合う。話も過不足なく手短で、登場人物もすっきりしてそれぞれに魅力的。なかなか味わいのある一作となっている。

75/100(07/05/13再見)

(評価:★3)

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