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[コメント] タイタス(1999/米)

贅沢極まりないグロテスク。
G31

「映画観客の多くは、騒々しい音響と飛び散る血しぶきやジェットコースターのような激しいだけの展開にキャーキャー反応するだけであり、この映画の冒頭に出てくる頭から紙袋を被って“目”だけの存在となったガキと同じようなものだ」という主張からか、そんなガキに目を開かせるために、突如大音量と供に現れた大人が、頭の紙袋を引き剥がして横抱きに抱き去り、物語世界の中へ強引に引き摺り込む、というオープニング・シーケンスは、ちょっと「猪口才な」という気もするが、好き嫌いで言うと結構好き。

圧倒する迫力で展開される物語世界の前では、本来その時代に存在しないはずの小道具や、映されるべきでない背景であっても、あっさり物語の中の意匠として取り込まれてしまうのだ、という現象は新しい発見でもあった。

が、もし子供たちの間に語るべき物語が存在しないのであれば、それは大人が与えていないからなので、むしろ枕元で寝物語を聞かせる母親のように、きちんと物語を紡いでやることの方が有効なのではないかと思う。この映画のように、大声でわめいたりグロテスクな描写で驚かせたり、で物語の破綻を無視して進めていくような展開では、描かれる世界こそ違えど、本質的にはそこらのスプラッタ・ムービーと変わらない。

「そうじゃない、冒頭の紙袋被ったガキは、大人である多くの観客の象徴なんだ」と言うんだろうけど、それならそれで「ほっといてくれよ」というのが感想である。金払って映画観るのに、わざわざ説教なんかされたかねーわい!という感じ。作り手や演者たちが贅沢の極みを尽くしたグロテスクを楽しんでるのはわかるが、その世界に無理矢理ついて来いと言われても、何か勘違いしていやしませんか?という感じ。

大スペクタクルを撮りたいという意志は伝わってくるし、そこは好きなんだけど、観客というものはローマ皇帝よりも偉いのである(ちょっと嘘)。

70/100(02/01/14見)

追記:hess氏がおっしゃるような台詞回しの素晴らしさについて指摘したコメントを読んで、観ながら「自分に英語がわかれば、この舞台劇のような作品の魅力をもう少し味わえたかもな」と考えていたことを思い出した。フランス語なんかだとわからなくても聞いてるだけで楽しい感じがすることあるけど、英語はやっぱ・・・。駄目でござんした。

追記2:ユシルア氏のコメントを読んで思い出した。暗記した長台詞を思い出すのに精一杯で、演技が止まり視線が泳いでいたシーンがチラホラあったような・・・。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)アルシュ[*]

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