[コメント] 妻よ薔薇のやうに(1935/日)
古風な魅力をたたえながら軽々とモダン娘を演じてみせる千葉早智子。
現代の、欧米基準みたいな細面のお目々パチクリの鼻筋スラリの美人顔とは違い、純和風といった風情なのだが、この千葉早智子はきれいだ。清潔感がある。
その千葉早智子が、母親世代の女における<古風VS.モダン>の対決に判定を下す物語だ。その対決とは、欲望VS.理性の対決、つまり理性なき欲望と欲望なき理性の対決に見えて、その実、<欲望の導く理性>と<理性に仮託された欲望>の対決である。これは実際のところ、古風とモダンの取り込み方の違い、変わり身の早さと変われないもどかしさの違いなのかもしれない。いずれにしても、現代社会がどちらを勝者と判定するか、われわれはみんな知っている。成瀬はすでにこの時代、それを直感的に見切っていたわけだ(そんな凄いことではないのかもしれない)が、負けゆく者への眼差しもまた確かである。
80/100(07/04/22記)
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