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[コメント] 赤い天使(1966/日)

赤い天使は負けたのさ。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 シンボリックに言えば、最後、軍医・岡部(芦田伸介)が握りしめていた折れた軍刀は性的不能を象徴している。西(若尾文子)によって男の機能を回復したはずの岡部だったけど、最期はインポテンツとして死んだことになる。つまり西は負けたんだよ。だから泣き崩れて終わるのさ。

 西が命を吹き込んだはずの男はみんな死ぬんだ。初めは、もともと助かる見込みのなかった男に、間違って命を吹き込んだ(輸血を施した)からだけど。だから次は、命には別状ない男を選び、彼に男としての自信を取り戻してやろうとした(体を提供して)。ところがこいつは自殺してしまった。彼女はこれを、心が伴わないからだと思ったんだね。逆に、心が伴えば、男を救うことができると思った。

 もちろん彼女は、軍医のことが好きだった。好きな軍医だから、救ってやれると思った。心をこめて命を吹き込んでやれると思った。彼女にとっては、軍医の不全を解消してやることが愛の証だった。それこそまさに、彼女にとっては勝利だったんだよ(俺も笑ったけどさ)。彼女の愛は通じたんだ。

 だから岡部軍医は生き延びなきゃいけなかったんだ。岡部は死んじゃいけなかった。彼女の勝利は、岡部の生を保証したはずだったんだ。なのに岡部は死んでしまった。しかも元のインポとして(軍刀は折れていた)。

 すなわち西は負けたんだ。生き延びたけど、負けたんだ。"Love conquers all."糞喰らえ、って話だ。増村らしいといえば増村らしい。

70/100(03/12/16見)

(評価:★3)

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