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[コメント] コレリ大尉のマンドリン(2001/米)

戦争への無理解と人間に対する洞察力の欠如。そこに残るのは、「敵」への一方的な憎悪。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ギリシア人にとっては同じ占領軍なのに、イタリア軍が受け容れられて、ドイツ軍が受け容れられなかったのが事実だとすれば、それはイタリア軍が享楽的で、ドイツ軍が非情だったから、という理由からではないはずだ。映画は2時間のお楽しみのためとはいえ、現実に人間関係も外交関係も存在するのだから、そういう安易な描き方はやめてほしい。戦争を厭い、戦争の生む悲劇を描く「反戦映画」の作りでありながら、むしろ人類を戦争へと駆り立ててきた「憎悪」を残してしまっていることに気付いていない。一本の映画を撮るという骨の折れる作業の中で、安易なステレオタイプに飛びつきたくなるのはわかるが、細部をリアルに描いてこそ、凡百のラブ・ストーリーも生きてくるというものだ。

ついでに言うと、自分から愛を告白しておきながら、最後何も言わずに逃亡するコレリ大尉(ニコラス・ケイジ)。勝手な解釈だが、南の島にはバカンスのようなつもりでやってきて、つかの間の恋愛を享楽するつもりでいたのに過ぎず、国には妻子がいたので、それを告白しようとしたのである。ひと度イタリアに帰ったら、もうギリシアには戻って来れないよ、と。(戻ってきたのは――善意に解釈すれば――、国の妻子との関係を清算してきたのである。)自分も含めて男の身勝手さについては、つねに女性に対してすまないな、という気持を持っている(?)ので、あの描き方はチト辛かったな。

戦闘シーンが迫力満点であったことは、評価しておかねばなるまい。この作品の中で唯一、冷静な視線と周到な準備、執拗な熱意を感じさせる部分である。

65/100(02/01/05見)

追記:あまりマンドリンは関係無かったな。こういう思わせぶりなタイトルのつけ方は嫌い。・・・と思ってたら、小説の映画化なのだと。では、小説では重要な小道具だったのだろうマンドリンを、映画としてはうまく活かすことが出来なかったのだな。実際にメロディーを聞かさなきゃいかんからツラいところではあるが。

追記2:ペネロペ・クルスの情熱的なダンスには、ギリシア人というより(まんま)スペイン人を感じてしまった。曲もフラメンコ調というかタンゴ調ではなかったか?

追記3:ドイツ兵がステレオタイプと書いたけど、敵を殺せない腰抜けとして描かれている(ウェーバー大尉=デビッド・モリッシー)のははじめて見た。びっくり、というよりうんざりだ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)peacefullife[*] ペペロンチーノ[*]

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