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[コメント] マジェスティック(2001/米)

映画という虚飾と、その虚飾の輝きに魅せられること。映画好きなら誰でも理解できるそんな心情を力強く肯定した、映画讃歌であり人生讃歌。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人生ってのは虚飾に満ち、本音を隠した騙し合いの連続さと高を括りながら、自分自身がそんな虚飾に捕われ舞い上がっている主人公。そんな彼が、ひょんなことから記憶を失って、人の善を信じ素直に受けとめる人間本来の純朴さを持った人々に接することによって、まず彼らの誠実さに応えようとし、もがくなかで人として成長し人生を正面から受け止める強さを培っていく、そんな物語であると捉えることができよう。主人公が虚飾に溺れているとは言いながら、その華やかさやきらきらとした輝きに単純に憧れていた頃の気持ちを持ちつづけていた青年だったから、成立しえた話だと思う。映画の魅力って(きっと)そういう所にあるものだから、映画好きには堪えられない魅力に溢れた作品である。

ファンタジーとはいえ、舞台を現代に設定することができず、50年代にまでさかのぼり、それでもなお、都会ではなく、くたびれかけた田舎町にしないとリアリティを生みえない所が、このせちがらい世の中の哀しい所ではある。

間接的とはいえ、昔の友人(以上だ)を指す終わり方は、やはり後味が悪い。赤狩りの問題を取り扱う時にはよほど気をつけないと、単純な善悪二元論に陥って、結局赤狩りと同じ事をするはめになる。実在の人物の名誉回復を狙うのであればそれもいいが、ファンタジーで取り上げるのはどうかな、と思った。人の素朴な信頼感の力強さを描いた映画で、この問題が解決されず終わってしまうのは、皮肉であり矛盾であり、残念だ。それと、無邪気な戦争肯定が描かれていたが、家族や同朋を守るため、と言うならまだしも、自由や正義といった信念を広めるため、と言われてしまうと、感情に訴えるものがない。アメリカ人がアメリカ人に見せるために撮った映画ということならそれでいいのかもしれないが、ちょっとナショナリスティックにすぎるかな。当事国としてアメリカと敵対していた国の後の世代からしてみると、到底受け入れられない理屈である。もちろんこれもナショナリスティックな反応なんだけど。

この地上に完璧な映画なんてものが存在しないのはよくわかっているけど、もう少しなんとかならなかったかなあ・・・・・・。

85/100(03/01/11記)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)tredair kazby[*] *

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