[コメント] 晩春(1949/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
母親を毒殺なんて前日談をフト空想。いやいや、それってユージン･オニールの『喪服の似合うエレクトラ』か。
結婚後、いつまで経っても再婚しない父親に騙されたと気付き、熊太郎(オイラならあだ名はプーさんにするなあ)を保険金殺人、出戻りなんて後日談をフト空想。それじゃあ、秋の夜長のＢ級サスペンスか。
映画全体的に、そういう劇的な逸話もなく、淡々としているだけに、余計に何か紀子の情念というか怨念めいたものが支配していて、見ているのが不思議と辛かった。
あの巧いんだか下手なんだかわからん笠智衆のセリフまわしはいいとして、終始、「俯き加減で陰鬱」か、「臍曲げて不機嫌」か、その両端を微妙にかつ繊細に行き来する原節子の表情がしんどかったのかもしれない。能のシーンなんて特に。その中で一種の清涼剤的役割を果たすのが、いつもながらのトリックスター杉村春子というところか。
あと、里見��氏の言う、ラストシーンは「俗受けしそうな技巧のための技巧、『考えオチ』」というのに、一票。わかるんだけど、どうもあのシーンは好きになれない。
原作では、「嘘から出た真」で周吉も再婚することになるのだそうだが、冒頭のくだらんネタはともかく、騙されたことを知った紀子のその後の行動に興味が湧くなあ。
私にとって、映像芸術としてならいろいろ興味深いところがあるけれど、物語として「父と娘」という世間では普遍的なテーマなれど、さほど面白みを感じなかったので、３点にした。
にしても、笠智衆の東大教授は信憑性ないだろー。あの朴訥さは精々助教授止まりぢゃないか？
〔★3.5〕
追記：尚、壺シーンに関してはこんなページを発見→http://www2.justnet.ne.jp/~on-bouge/Ozu1.htm
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