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[コメント] 蝶の舌(1999/スペイン)

一瞬輝きそうなエピソードすべて不発弾。ラストと合間の音楽だけがやたらに甘美で感傷的。スペインの歴史を少々予習して見た方が吉。■後日談:映画そのものより、ペペロンチーノ氏とtomwaits氏のreviewの方が断然面白い→
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







両氏のreviewを読んでなるほどと思いつつ、それでもやっぱり映画館での「なんだかなあ」感は払拭できず。

ちなみに、ペペロンチーノ氏の解釈、僕は(3)と(4)の両方の交錯かなあと思います。モンチョの頭(と心)の中はまさに「真空状態」。それまでの価値観がコペルニクス的にひっくり返るような、自分の処理能力を超えた問題に突然ぶつかると、人間、頭真っ白になるじゃないですか。でも、心のどこか奥底では、そんな真空状態を冷静に把握できてる自分もいる。この両方がないと、精神のバランスは保てないかと。

ミツバチのささやき』のラストの少女のささやき、『柔らかい殻』のラストの少年の叫びにも、これと似たような性質のアウフヘーベン的な両義の溶解、魂の平衡感覚のための心的運動、境界線の一時的喪失、そのようなものが見られたのではないでしょうか。 #ニール・ジョーダン監督の『ブッチャー・ボーイ』は未見ですが、ストーリーから想像するに、その溶解・心的運動がうまくいかなかった場合の悲劇かな、と。

更に、ある意味、確信犯的にかつ無意識的に、そういう矛盾が生じた状態で、過去の価値観を破壊(解体)しなければ(or されなければ)、新しい要素を組み込んだ価値観も再構成できないものだと思います。それがいわゆる「成長」なのではないかと。手垢にまみれていく、言い方を変えれば、外的世界に馴染んでいく、ということでしょうか。よって、tomwaits氏の指摘する、この作品は少年のイニシエーション・ストーリーであるという意見には、まったく同感です。

両氏のreviewを読んで、もう一度見てみようかな、という気にはなりました。こういう体験もCinemaScapeあってこそなんですよね。だからやめられん!

ありがとうございます。

追記:tomwaitsさん>たくさんのコメンテイターの方々が、まだ評価が確立されてない新作に対するの考えをぶつけあって、新しい発見を共有しあえるというのはホント実りあることだと思います。>

御意。これもまた価値観の解体と再構成なんですよね。最近、掲示板でも話題になっていますが、僕は元々喧嘩早い方なので、非生産的な鍔迫り合い的コメントも闘志が湧いて嫌いではないですが(笑)、それだけでは殺伐とした気持ちになるし、何より見ていてグロテスクですもんね、ハイ。批評・思考の共有、できなくても尊重、これ、非常に重要だと思います。

あと、「ヒーリング」「癒し」ですが、僕は、このフレーズも好きではないです。「いやしいやしいやしい…」って続けて言っても、実に卑しい。「癒されたい」なんて受け身の態勢でいるから、いつまでたっても癒されないんでしょう。本作にしろ『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にしろ、tomwaitsさんの仰る通り、「癒し」どころか、ズッシリ心に響いてきますよね。その余韻は、そんな軽薄な言葉で表現され得るものではないですよねえ。

(評価:★2)

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