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[コメント] ツィゴイネルワイゼン(1980/日)

艶麗たる妖かしの世界、この世とあの世の境目
ちわわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この前大島渚の『愛のコリーダ』をみた。 それと比較しつつ(なんでこのふたつを比較するの、といわれそう) ちょっとだけコメントを。

大島の方は、愛と死、フロイト的にはエロスとタナトス のむすびつきを思い出す映画になってました。 これはあきらかに意図しているので、強調してもいいでしょう。 大島は、ずっと西洋的で理念的な監督です。

しかしこの映画では、簡単にエロス、タナトスで説明できない気が します。生と死のあいだを、自由自在に横断しているのが、 この映画なのだから。

この映画の独自の窒息しそうな美しさは、非西洋的なにおいを かんじます。この点はよくわからない。でも重要な気がする。 鈴木清順は映画という西洋的芸術を、もういちどかみ砕き 消化して組み立てているのです。これは鈴木清順監督の、映画 にたいする距離のとりかたでしょう。これは監督に西洋的素養が ない、というのとは違うのです。川端や谷崎や三島が西洋的教養を みにつけながら日本を感じさせるのと同じです。

「ツィゴイネルワイゼン」という表題からして示唆的ですね。 サラサーテのつぶやき、ぜったいになにをいってるかわからないのです。この映画を解釈するどのこころみも、うまくいかないでしょう。

最後に、映画としてこれほど他者の存在を感じさせないのは珍しいことを指摘しておきます。それはこの映画が、語り部を中心とした能のごとき雰囲気をもっていることと無関係ではないのです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)緑雨[*] おーい粗茶[*] けにろん[*] ina sawa:38[*] mal[*] なつめ[*] tredair[*]

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