この映画、わりと意図は見えやすい。視点をいろいろ変えつつ、ある高校の数日を見つめ、ある些細（？）な事件を通じて明るみになった「世界」を示すということだ。例えば前田、宏樹、かすみ、沢島といった作品内の主要な人物から、悪役っぽい扱いの沙奈、高校球児をある意味象徴するかのような（ダサい？）風貌の努力家のキャプテンまで、人物に自分や自分が出会ってきた他者を映し出すことが可能だ。

もちろん、誰に共感できて誰にできないか、といったのは人それぞれで、それでかまわないだろう。例えば、竜汰。前田が片思いしている（と推察される）かすみの隠れた彼氏たるこの人物は、「何でこんなちりちり野郎と」と思う人がいるのもわかるけど、冷静に考えると、仲間思いで、ちゃらちゃらしても苛めっ子ではない、そこそこいい奴だね。個人的に、高校生自分はこういうタイプは苦手だったような気がするけども、今の自分にとってはそんな嫌な奴でない。沙奈のような人もそうだ。ああ多分、高校時代の俺なんて思いっきり馬鹿にされそうだが・・・

まあ多分、当事者感覚を自分が失っているってことなのかもしれないけども。

などと自分勝手に想像することがこの映画の正しい鑑賞法であるような気がする。

「衝撃の結末」だったかな。レンタルビデオの裏の解説の宣伝文句にそんな言葉があって、あれ？前田の8ミリのなかのシーンのことか？などと思ったが、そうではなくて、「何でも出来過ぎな宏樹の物悲しい表情」がそれか？と思い直したりする。しかしそう考えるなら、衝撃は結末だけにあるわけでもないのかも知れない。

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最後に、気づいたことを。

実果には、風助は見えるけど、前田は最後まで見えない。

かすみには、前田は見えるけど、実果と話するまで風助は見えない。

前田と沢島は、そもそも接点がなく、最初の対決は互いが見えないように見えるが、2度目の対決では互いに互いの何かが見える。

前田はかすみを見ようとするが、見えなくなる。

バレー部久保には、映画部は見えない、わけのわからない奴（ら）、に過ぎない。

沢島には、宏樹が見えるけど、宏樹にはたぶん沢島は見えてない。

沙奈はあんまり誰も見ようとはしないけど（梨紗、宏樹くらい）、吹奏楽部の後輩以外誰からも普段見られていないような沢島のある部分は見える。

梨紗は唯一見ようとしてきた桐島が見えなくなってしまう。

宏樹にはキャプテンが見える。最後に前田が見えるようになる。でも見えていたはずの桐島は見えない。

などと長々書かざるをえないところが、「世界」を語る難しさなのかもしれないが。