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[コメント] フェイシズ(1968/米)

あなたの顔がそこにあるということが、わたしの行動をなさしめる。
ちわわ

つき合っていた男性が自分とはまったくあわない ということに今やっとわかった、という女性のはなしを読んだことがある。 (下條信輔「<意識>とは何だろうか」)

これまでまったく意識していなかったことがあるときふと判ってしまう、 という経験はみんなしているとおもう。 それから彼女は何故彼が嫌いなのかを、いくつか理由を挙げていくだろう。 けれど、それら理由は全て、彼女がこれまで意識さえしていなかったはずなのだ。

ある日から友人の態度がまったく変わってしまうなんて経験もあるが、 それも同じことだ。その日からわたしは、別の人間として理解されてしまっている。ある日から、彼はむかつく人間になったり、親しい人間になったりする。

この映画では人間の顔が、どのように、あるひとつの「場」を産みだすか を繊細に捉えていく。つまりまずある意識内容を呈示するのではなく、 「場」を、いくつかの顔面が産みだす「場」を捉えていく。その場が、 ある人間にある発言を、行為をなさしめる。それがまた「場」を産みだす。 その場から別の場にうつったとき、初めて意味がみえるのだ。

おそろしいことだ。でもその「場」を捉えるということが、映画がわたしたち になすことができるひとつの愛なのかもしれない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)週一本[*] irodori[*] けにろん[*]

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