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[コメント] ロゼッタ(1999/仏=ベルギー)

安易なリアリズムをこえるもの。
ちわわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







手持ちカメラによるカメラ・ワークは、いっけんおちつきがないが、 少女の微妙な表情をとらえていく。さりげなく、でも表現は的確。

とくに注意すべきは、音である。少女の息づかいは、作品をとおして ずっと、聞こえ続ける。そして、バイクの音。 バイクの音は友人が登場するときから、最後まで少女が、 恐怖しつづけるものだ。これは、最後のシーンの描写に息詰まるような すごみを賦与する。この音だけでも、この映画の水準のたかさがわかる。

この作品のロジックは、こういった微細なところに、あるようにおもう。 主人公が思春期の少女であり、アル中の母親は社会面、性的な面で、 少女に、まさに底なし沼のような不安をあたえているのだが、 その不安も単なるリアリズムではない。カメラはあるものを「的確に」 捉えていく。ものを映すことと、リアリズムであることは両立しない。 なぜなら、リアリズムとはもっとも、観念的なのだから。 たとえば、卵にせよ、沼にせよ、長靴にせよ、少女のまなざしとともに、 対象以外の潜在的な何かを示しているのだ。そのための映画語法として さきほどの映像と音があるのだ。 このとき安易なリアリズムは乗り越えられている。

友人の男性は、彼女にとって、最大の恐怖であるが、どうじに最大の 救いにもなるものだ。さいごの彼女のまなざしには、救いがみえる。

パルム・ドールに値する作品は、他にもあったであろうが、この作品が 受賞したことは当然だったとおもう。

(評価:★4)

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