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[コメント] ロスト・イン・トランスレーション(2003/米=日)

湿度が伝わってくるような東京の撮り方はいい。まとわりつく空気とそっけない人々っていう状況を、主人公(監督)はちょっと楽しんでいるんだと思う。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そういう気分で眺める街の風景にメソメソするのを自己演出というかも知れないけど、一人旅(みたいなもんだ)っていうのは、そういうセンスを試してみる場なんだとも思う。旅人なら冬の日本海見たらたたずみたくなるでしょ(地元の人に「お客さん風邪ひくよ」とか言われても)。曇り空に向けてチューニングしてみたら、自分と同じメッセージが聴こえてきた…みたいな娘気分を味わえるのがちょっといい。

ただ本気にもなれない。ビッグショッピングモールや家族連れでやかましいところなど、心象風景にそぐわないところにはいかない。そのくらいの余裕は彼女、ある。そこを感じさせてしまうところに作為が見えてしまう。浅さが見えてしまう。表現したい世界の舞台裏が見えてしまうのだ。

劇中、ビルが人生について「子供ができたことで劇的に変わる」という台詞があるが、こういうのは誰かから聞いたことのある台詞をかいつまんで見ただけで、監督自身が未消化なように感じる。日本の友人に劇伴として「風をあつめて」を紹介してもらった。いい曲だ。歌詞の意味は?訳してもらったら、素敵じゃない。作品にもあっているし。たまたまピンときたんで使ってみたっていう感じだ。たとえばいろいろ聴きこんだ末、到達した日本の心象風景だから使ったっていう感じはしない。セレクトショップのオーナーなら、感覚的に響いたものをサッと集めてみせるだけでもいいのかも知れないけど、物作りとかっていうのは、もっと内面をさらしてしまうものではないだろうか。こういうところに作り手の理解の深さっていうのは透けて見える。多分監督に足りないのは「何でそう思うのか」っていう自己への問いかけのように思う。自分の言葉になっていくことで、作為さは薄れていくように思う(その代り瑞々しいセンスは失われる?どうだろう?)。

余談だけど、エレベーターで最初に2人が出会うシーン(「自然に笑った」とか言って、結構大事なシーンになった)、何で絵が逆版(左右さかさま)になっているのか?と気になったら、どうも構図の関係であえてああしたらしい。日本人は襟合わせって結構気になると思うんだよね。監督、一応知っておくべし。

(評価:★3)

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