コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] グエムル 漢江の怪物(2006/韓国)

この監督とても他人とは思えませんでした。あまりにも私のツボをおしまくりです。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







橋の裏側に垂れ下がっている黒いもの、川岸を向こうから走ってくるもの、あれ何?って思わず目を凝らす。「不可知なもの」が一瞬にして「やばい」に転化するも、もう手遅れなため無意識に対象を否定してみたり…という感覚の擬似体験が素敵過ぎます。それが自分の横を素通りして、ようやく正気を取り戻して、とりあえず逃げ出してみる。自分の安全が一瞬確認できたところで、客観的視点として俯瞰の絵が差し挟まれる。それが絶対安全地帯の橋の上からの車窓の風景だなんて心憎い。人間は自分が安全なところから危険なものを見るのが好きだ、と言われますが、まさにそれ。監督は、多分こういうのを子供のときから夢想してたんでしょうね。共感するなあ。売店から覗き見ると、大口を開けて雨を飲んでいるそれ。土手でこけるそれ。なんと寝ている間に踏み台にされるそれ。ポエジーだ…。葬儀場で「お前のおかげで家族がみんな集まったよ」といいながら4人がもんどりうって、それぞれ勝手に泣いたり痛がったりパンツが見えそうになっているのを泣きながら整えてやったり。韓国流所構わずギャグ、というより、人が必死になっている姿というのは滑稽なものだ、という監督のリアリズムという感じがして私にはしっくり来る。4人家族を演じた俳優たちもその点の監督の意図を心得ていると見え、4名が演じる凸凹感と一体感、達者な演技力に支えられてるという感じでうまいなあと思う。とりわけ個人的にはペ・ドゥナ(<ファンなので)。病院の地下駐車場から脱出する場面で乗り遅れるも車の間をひょこひょこ縫ってきたり、「長男をバカにしてるだろう」と父親に説教を垂れられている時に、グエムルのエラのような奇妙な形に口をとがらしたり、川岸を不恰好に激走したり、ブラをチラっと見せてくれたりしてたまらなく可愛い。アーチの形に沿うように階段を上り降りしながら進む橋の床板の下や、側溝のコンクリの向こう側で滴(したた)って、遠くの方からこっちを見つけて向かってくる追跡者の姿をもやで霞ませる「雨」の描写。……もう相性ばっちりです、監督。次もヨロシクお願いします!

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)3819695[*] mikaz[*] NOM[*] 水那岐[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。