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[コメント] アバター(2009/米)

観る前から知っているストーリーと、何度も見たことがある「誰も見たことのない世界」。しかししかしこの本気に気圧される。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この画面の隅々までほとんど実物を撮影したものなどでなく、ゼロから描いていったわけでしょう? こりゃ凄いよ、凄すぎる。一行がやってきた翼竜の巣に群れる何体もの竜の、それぞれが勝手に動き回る、その翼のつけねの筋肉も、すべてが元は何もないなんて。

ネイティブアメリカンのような容姿とも見まがうナビィたちを、これでもかと米軍が虐殺しまくる戦闘シーンをハリウッド映画が贅をつくして描いているなんて…と思いつつ、ここには国史の改悛などさらさら無く、プリミティブもスーパーネイチャーも本気の理想とも思ってさえない、ただただフラットな思考かせいぜい前政権とグローバリズムへの恨み節くらいしか見られない。何でそう思うかというと、あまりに虐殺・破壊シーンにためらいがないからなのだけど。現実にアメリカという国がしてきたことを思えば、もう少し筆がにぶるとかあってもよさそうなのに、と思う。また、監督が信頼を置いているのは多分圧倒的にテクノロジーのほうだろう。そのことを棚上げして生命が生態系の中で還流し感応しあう中に人類も回帰していくほうが勝者のような、思ってもないような話を書いちゃっている(<自分の脚本で)感がする。

思えばキャメロン監督って何か自分の理念だとか自分の理想を物語ろうとした作品ってないよなあ。『アビス』は割とそうだったけど、あれは偶然そうなっちゃったって感じで。言いたいことも、見せたいものも持っていない、だけど見せ方を見せたい人なのだな。宮崎駿が自然破壊を憎みながら、工業的な機関への自分の憧れに嘘をつけずそれも隠さず描いてしまう(そして話がまとまらなくなる)というのとは違う。

あ、一個だけ見せたい(というよりも監督自身がみたい)と思ってそうなのがあった。巨大女性に抱かれる男。ナビィの身長設定ってこの場面のためのもんなんじゃないだろうか?

3Dで鑑賞したのだが、速い動きの見苦しさよりも、やはり暗さが気になる(それでもだいぶ明るいという上映システムで観たのだけど)。3Dはあんまり物語の映画に必要な仕組みではないように思うけど、今後こういうランドスケープ体感型タイプのジャンルがいろいろ作られるきっかけになるかも知れない。翼竜の急滑降シーンなんて3Dと2Dじゃ相当の差だったろうし。平面階層だから、窓ガラスに映っている像なんかは凄いいい感じだったけど、壁に貼られたスナップ写真まで飛び出していたのは編集ミスなんじゃ? それともホログラフ?

(評価:★4)

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