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[コメント] 煙突の見える場所(1953/日)

話の主旨と離れるが、健三さんと仙子さんの間借り人同士というシチュに萌え。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「仙子さんに気をとられず勉強に専念すべし」なんて貼り紙を、当の彼女に見つけられた日には萌えを通り越して身悶えしてしまいそう。でもまるで意に介さないふうにさっさと貼り紙をかたづける健三はとってもクール(思わず彼女の前で真っ赤になったりしないのだ。うーん男前!)。何といってもこの話、芥川比呂志演じる健三という人物の、飄々とした明るさと人々との間の距離感の取り方に救われるところ大である。

健三と仙子は戦後の新しい価値観のこれからを生きようとする若者。そんな二人が大家夫婦の仲に、旧態依然としたものや戦争の陰などのしこりを見出しながら、反発したり穏やかに見守ったりする。狭い空間で顔を突き合わせながら、互いに見ないふりをしたり、時には言いたいことをズケズケ言ったりもする。それでも関係がぎくしゃくしないのは、健三がバランス感覚を発揮したことと、ここに居合わせた人がみなお互いに思いやりの心は持っていたからなんだろうな、と、そんな機微のあり方を味わわせてくれる。

煮詰まったり、やりきれなくなったり、照れくさくなったりした時に、健三が煙突を見ると、その数が増えたり減ったりする。「あれ〜?」と素っ頓狂に不思議そうに声に出すことで、ちょっと目先の苦しみからホッと一息つくのである。煙突のとぼけた風情がたまらない。人はこんなふうな知恵で日々を生き抜くのだな。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得 ぽんしゅう[*]

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