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[コメント] 仁義なき戦い 広島死闘編(1973/日)

自分も第1作推しです。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第1作のパノラミックな戯画調がスタイルとして突出しているというのはあるけど、やっぱり一番は広能こと菅原文太が実質の主役ではないということが大きいかな。1作目を何度も観るのは、やっぱり広能を観たいからで。

北大路欣也演じる山中の自決に至るまでの終盤の無常感は絶品だけど、あの人が人殺ししたのはみんなおじさんたちに頼まれてやったことじゃないの!と喰ってかかり、喰ってかかっても所詮当時の女の無力さに負け嗚咽する梶芽衣子に個人的には軍配。ある意味被害者だが好き勝手な生き方を選んだのは男で、その末路はそれなりの罰であるのに対し、ただそんな男を愛してしまった女、前夫を特攻隊で殺された女、特攻隊で生き残った男をまた殺された女、男たちの「かっこがつかん」という面子に終始する戦争という都合に従う以外の道を許されない女になんの罰が与えられる理由があるのか。『修羅雪姫』でも素晴らしい嗚咽を見せてくれた梶芽衣子の何という美しさ。こんな女性と愛し愛されるようなことがあったら人生なんてどうでもよくなってしまいそう。こんな女性が現実に目の前にいたら完全に私は狂うな。

素晴らしい演技だった北大路欣也だが、その北大路欣也のわがままから山中役と大友役を交換するはめになり、そして却って強烈なキャラを誕生させることに貢献した千葉ちゃんは凄かった。

あと、あまり取り挙げられることがないようなところなんだろうけど、好きな場面をひとつ。小池朝雄が、靖子の家でくつろぐ山中を出会いがしらに張り手をかまし、すぐさま「親父が怒ってるから早く逃げろ」といい成田三樹夫が後をついで山中に指示をするまでの芝居の小気味よさと、厳しさと温情が同時に感じられるところが最高。こういうのを観ると「男はやっぱりかっこつけんといかんのぉ」とまた思ってしまうのでした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)緑雨[*] DSCH[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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