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[コメント] 獄門島(1977/日)

血は流れるが血の通わないトリック。この犯人にしてこのトリックあり?
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







証拠を何とか隠蔽しようとする必死さがあったり、あるいは探偵や世間に謎解きを挑もうと愉しんでいる様子が覗えたり、トリックには仕掛けた人物の「思い」が透けてくるはずだ。ずばり本作の犯人の心情は「いやいやながら仕方なしに」であったと思うし、後から振り返っても役者たちはそんなふうに演じていたように思う。ところが、いやいややっているような人間にしてはトリックが妙に積極的というか、ためらいがないというのがどうにも違和感を覚える。特に釣鐘のトリックのような素晴らしい着想は、もし仲間がいたら多分「お前ってよくそういうこと思いつくね」と感心され怖れられるような「冴え」が感じられる。現実では、善良といえる人間の頭脳が、片一方で脈絡なく残酷な思いつきを生み出す不思議もあるのかも知れないが、そういうことをテーマに据えたドラマでもないかぎりフィクションでは無理を感じてしまう。せっかく今回のような特殊な動機(というかかなり強引)を扱ったのならば、自分に容疑が向けられないようにそれなりにトリックを組み立てはするものの、どこかで犯罪に気後れしている心情や、完全に隠匿しようとすることへの罪悪感のような忌避感がどこかで犯行にゆるみを生じさせ、そこを不思議に思った金田一がそのわずかなほころびを押し広げて突き崩していくという展開のほうが、面白いかどうかはともかく「ドラマ」っぽい。 

また、解決編が唐突に始まるような印象が残念。巡査が「そういえば何かが水に落ちる音がした」などというくだりは、ちゃんとそういうシーンが前もって用意されていないと、「ああ、そうえいば」と膝をうつことができない。あとから台詞でそんなことだけ言われても困る。性急な解決編は、「ドラマ」はさておき「謎解き」で楽しめます、というわけにもいかなかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ダリア[*] Myurakz[*] けにろん[*]

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