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[コメント] アトミック・ブロンド(2017/米)

コミックが原作と言われ、なるほどと思うキャラのビジュアル造型と舞台と小道具、スタイリッシュな構図。それとオチ。目指すものはあくまでそれら。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ガチのスパイものというのではなく、後世代のおそらくアニメやコミックが大好きなクリエイターたちが、冷戦下のスパイ戦のアナログチックな戦いや、あの時代の都市の風景などへの憧れで作った作品。か、もしくはそうやって作られた原作を「わかっている」作り手たちがリスペクトして作った作品と思う。

ヒロイン、MI6上司、CIA幹部、潜入先の相棒、レスビアンの恋人、リストを記憶する男と家族、バックアップチームのハンサムボーイ…などのキャラ設定や、ナイトパブ、煤けた壁の横で遊ぶ子供たち、東欧の古びたビルのコンクリ、雪や雨で化粧された街並みなど、いわゆる「イメージボード」や「設定画」の段階で作り手たちが存分に楽しんでいるのが手に取るように伝わる。

なぜならこの映画「ああ、これを描きたい」「あれも描きたい」で、あふれかえっているから。格闘アクションを真横から両者の全身がフレームに収まるようにとる構図や、車が衝突してふっとぶシーンの重量感よりも滞空の浮遊感を強調するテンポなどは、ゲームやアニメ世代のクリエイターにとってはそれがなにより「正しい」からだろう。氷風呂から浮かび上がるヒロインやレズのシーンなど、まんま攻殻機動隊みたいだし、作り手たちのバックボーンが良くわかる。

冷戦下のスパイ物、それも二重スパイとくれば、主人公の葛藤とか内面にドラマを向けたくなるところだが、逆に作り手がそこに何も求めていないこともまた良くわかる。彼らはかっこいい(といっても弱さも汚さも織り込むくらいのひねりは包含した)ヒロインを描きたいのであって、2転3転するオチで最後に一番カッコイイポジションに収まってこその作劇なのだ。オチですらヒロインを際立させるための手段といってもいいくらいと思う。

なんだけど、作り手が映画人としての矜持を見せてくれるのが、ビルの階段を殴り合いしながら降りてくるアクション。ここだけはアニメやコミックの影響を離れた「映画でしかできない」表現にこだわったところだろう。俳優たちが容赦なく階段をころげていくアクションこそ映画人たる彼らの、憧れの対象に対するアンサーだったのだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] 月魚[*] DSCH

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