「すべてＰＣ画面の中で完結する」というアイデアありきの作品で、すべてＰＣでのみ調査をしようとし、自分の足で歩いて調べない主人公に「喝！」なことを筆頭に、終盤のニュース映像や葬儀社の記録映像など、確かに設定ありきな強引さ（別にこれらの映像はＰＣ画面内である必要がない）もあるけど、娘のアカウントから初めてたちのぼる個人的な秘密、希薄な友人関係、ネット越しでしか知り得ないもどかしさ（だから出かけて行けよ！なんだけど）、２分割画面が可能にする対話している人同士の演技が並行して観られる面白さなど、この設定ならではのアイデアをかなりとりこぼさなく表現できていると思った。特に作品内を流れている時間（作品内でその人物たちが過ごしている時間）のコントロールに関しては、人物が動作しているところをあまり見せずにすむことで、かなり自在に操っている感じがした。

ＰＣでネット配信で観ていたので、検索窓のカーソルの動きやタイピングなどはかえってインタラクティブな生々しさもあって、この点は劇場で観ていた方よりは絶対好条件だったと思う。あとミステリーとしての物語もシンプルでありながらよくできていて、冒頭のＰＣを使い始めた家族の高揚感が、ラストのハッピーエンドにつながっていく構成も良心的で良かった。