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[コメント] 来る(2018/日)

それがドラマの中核というわけでもないのに、ホラー風のエグい描写が突出してしまう監督の作風。ならば、ホラーでエグい映像こそがテーマの作品を撮らせてみよう…
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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という考えが、観る前から実はうまくいかないような気がしていたら、やっぱり案の定だった。この監督の技が冴えわたるのは、なにかいつも求められているテーマから逸れたほうに行きがちで、どこか不発な作品を作り続けている監督というような気がする。

思えばAKB48のメンバーがクレイ人形のように次々と潰されていく、そのあまりのグロさからお蔵入りしたMVや『告白』は、いずれもエグい映像やエグい子どもたちの描写が必ずしもテーマではなかったのに、それが突出して魅力的だった。ならばその得意分野をより発揮できそうだからと、聖少女の謎の裏世界を描く『渇き。』を撮ってみると、心理的にエグいネタが作品の中にあるのにも関わらず、うわべのエグい映像表現にのみ拘泥し、もっともミステリアスなヒロインの心理面をスルーするなんだかよくわからない作品になってしまった。

今回正統派のホラーを監督すれば存分にエグい表現で見せてくれる筈…という思惑がうまくいかないような気がしてたのは、そういう理由からです。今回派手な残虐シーンよりも冴えて描いてしまっていたのは、妻夫木、黒木夫妻の薄っぺらい軽薄な現代人の黒い姿のほうでした。この夫婦の結婚式のシーンは、予告編の時からもう圧倒的に魅力的でワクワクし、どうしてふつうに結婚式を撮っているのがこんなに悪意に満ちているのか訳がわからないのに、これは期待できそう!という感じが、終盤の大がかりな除霊式のシーンよりもぜんぜん感じられて、いざ劇場に行って本編を観たら予告編で感じたとおりだったという。。監督がこんどはシニカルなホームドラマを撮ったら、また枝葉のところに才気が爆発しちゃいそう。書いてて思い当たったけどこの監督は、自分が嫌悪している対象を「悪意を込めて」演出している時にこそ、最も冴えた描写を生み出すような気がする。『告白』の中学生、『渇き。』のクズのような若者しかり。イクメンパパやシングルマザーの頑張ってる感や親戚の人間関係はきっと嫌いで、除霊式やぎぼわんには監督がなんの悪意も感じてないんだろうな、そんな気がする。

妻夫木、黒木、岡田、松、と、主役がどんどん死んだりなんかで途中交替していく構成が新鮮だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)irodori[*] ロープブレーク[*] DSCH[*] セント[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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