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[コメント] 天気の子(2019/日)

俺だってそうする。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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と、ストレートに感じる。これはもうこういう映画でいい。子ども2人でアパート暮らしとか、その割に弟のスクールライフが余裕に満ちているとか、捜索願いが出てる子どもがネットで大活躍なのに正体が暴かれないとか、銃を誰にも気づかれずしばらく持ち歩いていたりとか、あっさり警察署から逃亡とか、児童文学だってやらないような幼稚な設定。「少年、いま胸みてたでしょ?」とか、弟くんを「先輩!」と言わせてしまうような発想も、劇場に大勢観に来てた主人公と同世代の子どもたちのほうが恥ずかしく感じることはなかったのか、と思ってしまった。

新海監督だからねえ、ってわけではなく、なんか今書いたことが許せてしまったマジックは、やっぱり、主に池袋〜新宿間の、雨に打たれる東京の風景の美しさに目が離せなくなってしまったからだったように思う。雨の叙情をこれでもかと見せてくれる。その力が批判的な考えを押さえつけてしまう。そうして、まんまとこのファンタジー界の住人になってしまっていた気がする。彼女にもう一度会えさえすれば、あとはどうなってもいい、っていうような、純真な感情に同化することってフィクションを見たり読んだりしても、なかなか経験できないことが多いけど、今回私はまんまと嵌ってしまったなあ。

君の名は。』よりも監督の独りよがりが強くなっているけど、そこがとてもいい。東京水没という結果もいっそ清々しい。彼女が帰ってきたけど、そのあと雨は降ったり晴れたりで、結局彼女の能力は消えてしまった…あるいは最初からそんなものはなかったか…っていう「ありがちな」結末で良かったのに、しっかり能力は肯定するところが好き。監督が自分オタクのスタンスを表明しているのだろう。僕の作品はこうなんですよっていう。

才能のあるオタクの考えることを、なるべく他の大人(の見識)がとやかく口を出さないで、原石に近いまま世に出すことが大事なんだと思う。もうそういうことも製作側もよくわかっているのだろうな。レコード会社が知恵を出すより素人がさっさと動画でヒット曲を出しちゃう時代なんだから。ASMRなんてまともな大人から生まれることはないもの。「お姉さんだと思ってた彼女が実は同い年は愚か、年下なんですか? その設定ってなんの意味が…」なんて言っちゃいけないのだ。正直その萌え点はよくわからないんだけど、そういう監督のフェティッシュこそが、映画に意識下の不思議な魅力をもたらすものなのだ、きっと。それを許すのはビジネス的には勇気がいるだろうけど笑。

監督は、今年(2019年)の7月のような雨ばかりの時期に、「ああ晴れにならないかなあ」とふと思うと同時に、いや、もしかしたら晴れっていうのは、美少女の命と引き換えなのかも知れないなどと、思わずキュンキュンしたことが着想の原点なのかなあ、とか想像すると楽しい。ともあれ、ここまで自分の妄想に近い創作物に、何億円という予算と、エンドクレジットで流れる多数の人間が協力してくれるのだ。人生の最高の幸せの形態。もう作家、というより、人としての冥利につきると思う。新海監督凄いステージにいるなあ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)クワドラAS サイモン64[*] けにろん[*] 水那岐[*]

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