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[コメント] イソップの思うツボ(2019/日)

台本とできあがった作品がミスマッチな感じ。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







台本は数段にひねられてて話としては面白いが、できあがった作品の醸しだす世界観と齟齬をきたしている感じがした。最後のカットで主人公一家がイラストに転換されるのだが、そのイラストの一家の雰囲気のほうが、本作の世界観にあっていると思った。簡単に言ってしまうと、本作の話って凄くフィクション度の高い話で、現実味のすごく薄い話だと思う。俳優の演技や、演出、全体として、そのフィクション度の高い、要は「嘘くさい」話を、うまくオブラートに包みこまないといけなかったんだと思う。

カメ止め』の登場人物ように、われわれのような一般人がのっぴきならない状況に追い込まれ、そのハプニングが勝手に面白い事件になっているのを、作品外の存在が構成の仕方で「騙す」のなら、俳優は素で何が画面に出てしまっても、かえって現実味が出ていいのだが、本作のように登場人物たちが、登場人物たちを欺くための芝居をするのだから、素の出し方はかなりコントロールが必要になる。そうなってくると、こういう話はいわゆる「芝居のできる」俳優を、演出側が徹底的に「それっぽく」コントロールして、完璧な嘘を作っていく必要があったと思う。だからラストで主人公たちがイラストになって戯画化した時にしっくりした印象を受けたのだと思う。

つまり本作の話、役者の素が生々しく出ることと、とても相性が悪いのだ。いわく、ウサギ一家や黒幕のヤクザの人の良さみたいなものが、勝手ににじみ出てしまっているようなところが出てくると、なにしろ人が死ぬ話なので、あまり愉快に騙される気分にならない。いかにも「それっぽい」地下のお金持ちの人たちが、それっぽく見えない。フィクションはどんなに嘘が強くても。それが世界観の中で破たんしてなければ嘘が嘘と感じないものだ。そこが上手くいってなかったと思う。監督が分担したっていうこと、表面上は全然違いが気になることはないけど、案外作品に強く作用してしまったかも知れない。

(評価:★3)

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