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[コメント] パラサイト 半地下の家族(2019/韓国)

この展開を予想できた人って世界に誰もいないのでは?
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







貧乏一家が金持ちの家を乗っ取って…で始まり、金持ち一家がキャンプで外泊するという日に一家がリビングで宴会をおっぱじめて…とくれば、いわゆる死亡フラグ確定なわけで、まあ絶対これからピンチが起こることはわかる。しかしそこからの筋を正確に予想できた人って監督以外に誰かいただろうか? その結果は意外性が高い割りには、なくもない現実感があるのがポイント(韓国の金持ちは地下に核シェルターを作っているという、事実がどうかともかくさもありな設定が大きい)。貧乏一家がいました(起)、金持ち一家を騙して乗っ取ろうとします(承)、という起承の部分がまず充分面白いところで、「転」が意外性と現実味を兼ね備えているという、物語としてまず面白いということがこの作品の一番のストロングポイントだろう。

しかも、この話の「結」がとても気が利いているのだから最強だ。家主を殺して逃亡していた父親はその館の地下室で暮らしている。父親を救い出す方法が、正規の方法でその邸宅を買い上げるということだ。あまりに当たり前でわかりきっている方法を提示して見せるという、大胆なミステリーのトリックというのがこういうものだ。つまり起承転結そのどれもが秀逸なのである。最後の父親救出を実際に見せるのではなく、夢想の中での出来事とし、かつ本作で最高の台詞「私と母は庭にいます。なぜならそこが日当たりを一番感じられるからです。そしてお父さんは、ただそのまま上がってきてください(うろおぼえ)」で締める。ここの映像とこの台詞で本作はドタバタコメディとは違うステータスを確保できていると思うのだ。

ドタバタコメデイが悪いわけではないが、それだとそのドタバタを見せて笑わせることが目的になってしまい、「格差社会への風刺」というテーマが弱くなってしまう。あの息子の手紙の一節こそは、格差問題を題材にした作品の輪郭を整えた一節であり、カンヌグランプリを決定づける一節だったように思う。

格差社会を見せつけるための高低を表現するための造型が素晴らしく、大雨の日の水の落下の水の勢いがそれをさらに強調する。トイレが家の中で一番高い位置にある(下水の都合で、水回りは地上家のそれと高さが変えられないということなのだろう)というのも、ただのリアリティなのかも知れないが説得力がある。父親がしつこく臭いや安物っぽさを家主の社長に無自覚にいじられるのだが、自分のそれにはガマンできるのに、娘の下着を安物のパンティと言われ「あれを君が履けば燃えそうだ」と夫人に言い、夫人も「だったらドラッグを頂戴よ」と言われたり、家政婦の夫の死体から車の鍵を引っ張り出すときの、おそらく長い間風呂に入っていない体臭を無自覚に指摘されるといった、いわば人格の蔑みに至るによって、怒りがあらわになるという点も見事。経済の格差は仕方がないとしても、人格を蔑んではいけないのだ、ということだ。

起承転結のそれぞれのエピソードと、テーマ。監督の本作の着想の原点はわからないが、そのどれもが最初に思いついたといっても差し支えのないほどの冴えた出来で、しかもそれが非常に自然に連続し、良いバランスを保てている、というのが本作の傑作の所以だろう。

ひとつ欲を言えば、ソン・ガンホが、あまりにもふつうにソン・ガンホだったことで、宛書をするからそうなるのだろうが、ポンコツだけど正義漢以外のもう少し何かが見たかったこと。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)dov プロキオン14 死ぬまでシネマ[*] 四面馬鹿 寒山拾得[*] けにろん[*]

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