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[コメント] スカーフェイス(1983/米)

自分のやりたいことを節度を保ちながらやれる。デ・パルマ監督はまさに職人。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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道路の見張りの車からカメラが移動してって、コロンビア人の売人のアパート、その外階段を下から上へあがってアパートの室内へ、っていうクレーンワーク。そして最後の銃撃戦の舞台になるモンタナ邸の、プールを挟んで左右に曲線を描く階段のあるエントランス。こういう大道具的舞台装置みたいなものはろこつに監督の趣味であって、脚本家も主演俳優にも埒外のことだ。難民あがりのギャングの破滅の人生を、脚本家や役者がそれぞれの情熱を注ぎ込んで創造しているところと、ある意味無関係に監督が楽しんじゃっているところがいい。

南米やマイアミの南国の屋外でヤクやファックだって、キューバ難民の若いチンピラのギラギラしたガサツな人間たちのドラマが、彼らが室内に入ってくると、いかにもスタジオっぽい照明とそれに80年代のシンセサウンドに彩られ、とたんに場面が舞台装置となる。『スネークアイズ』がいい例だけど、監督は、ドラマの舞台を屋根を取り外した模型の上からのぞき込むような、舞台の間取りと人々の配置をどうするか、みたいなことにフェチがあるんだろう。

そういう趣味的なものがない創作物っていうのはつまらない、と同時に、その趣味が行き過ぎて、他の創作物(脚本や演技)を壊してしまっちゃうとこれはまたダメなのだ。その点でデ・パルマっていう人は、その自分の趣味の節度っていうものをわかっていて、自分のフェチを満たしつつ作品を客観的に見れる人なんだなあ、と感心する。ラストのモンタナ邸襲撃の場面、本来なら画面を分割して、複数の場面を同時進行的に見せるところなんだろうがさすがに外連味が過ぎる、リアルなパシーノの演技に集中できない。そこをモンタナ邸の複数の防犯カメラのモニタでうまく欲望を満たしているあたりなんか、さすが〜、って感じである。背後からプールへの落下なんて、みようによってはオペラっぽい悲劇を連想させるけど、監督の趣味的な方向とはちょっと違うみたいな…周囲をまるく納得させてしまうみたいなやり方。うまいなあ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] ぽんしゅう[*]

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