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[コメント] ヴェロニカ・ゲリン(2003/米=アイルランド=英)

細部の設定に関してはリアルだが、大まかな部分の描写に雑さが目立つのが気になる。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アイルランドの麻薬犯罪を追及する記事を書き続けた女性記者ヴェロニカ・ゲリンの生涯を描いた映画。

ヴェロニカの型破りな取材方法、被害に遭っても平然としている態度など、実話の映画かなのだがあまりリアリティが感じられない。取材にあたり情報提供するマフィアに関連のある男が実はマフィアの上層部と繋がっているために、密かにヴェロニカの暗殺計画を企てたり、わざと嘘のネタを流させてジャーナリストとしてヴェロニカの取材を辞めさせようとしたりするなど、細部に関してはリアルだが、ヴェロニカの取材シーンなど大まかな部分で雑さが感じられる。

例えば、取材方法で麻薬犯罪に関わっていると思われる人物たちの自宅に真っ向から取材しにいくのは別に悪くないのだが、仮にも犯罪者だったらその場で殺されるかも知れない危険な相手を取材しに来ているのに、ヴェロニカが襲われた時のための対策を何も用意していないのは解せない。特に後半のジョン・ギリガンへの取材はヴェロニカが襲撃された後のことを考えるともっと警戒すべきだと思う。ラストにしてもそれまでに彼女は麻薬組織の存在を揺るがす写真を警察に撮らせているのだから、自分の命が狙われるかも知れないのに、裁判帰りに護衛もいないというのも、麻薬組織の綿密な犯罪計画の説得力を失わせている。

それらが彼女の実際の行動を脚色ものなら仕方ないのだが、彼女の麻薬犯罪を追及した記事を書き続ける目的が映像からは今ひとつ伝わりにくいため、彼女の取材行動自体が自分で自分の首を絞める結果となってしまい、ラストの衝撃の死のシーンへとつながるのだが、正直感動要素が薄い。

また、自宅に銃が発泡されたり、ヴェロニカが暗殺者に殺されそうになったり、はたまたジョン・ギリガン取材の際に激しく暴行されているのに、その後平然を装うところも彼女の内面が掴みづらいし、内に秘める女性らしさや、取材することへの恐怖心といった感情が感じられず、いくら実話の映画化とはいえ感情移入しにくい。

役者としてはヴェロニカ役ケート・ブランシェットは毎回確かな演技力で役をこなしていて非常に感心するし、今回もヴェロニカ・ゲリンを真に迫る演技で熱演していて演技的には申し分はないのだが、ストーリー自体がそれほどリアリティが感じられる程のものでもないため、キャラ的な魅力がちょっと弱かったのが残念。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)oh! ちい星 ナッシュ13[*] セント[*]

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