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[コメント] 009 RE:CYBORG(2012/日)

「小賢しい」の一言に尽きる。
BRAVO30000W!

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







すでに数々の「非難」レビューが出ているところにわざわざ書き足すこともないんだが、たまたま見ちゃったのでこのモヤモヤを解消すべく書く。

キャラデザインがかっちょよく変わったのはまだいい。そもそも原作と絵が近いアニメ化作品は平成版くらいのもので、白黒の旧昭和版に至っては009は黒髪だし007は子供だし、新昭和版はそれなりに人気があったし、初期の頃から見ている者からすれば「ああ、これって今風ね」程度で済ませられる話である。

神とか天使とか出てくるのも別に構わない。もともと押井監督がやるつもりだったとか、その時の設定がぶっ飛んでたとか(001の脳が犬に移植されてたりとか)、押井監督大好き人間が過去の押井版ルパンを初め様々な押井作品からモチーフを持ってきたとか、なんかネットを探すといろんな情報がわんさか出てくるけど、そもそも原作にも神とか天使とか出てきたわけだし、それもうまくオチがつかないまま原作者は他界してしまったわけだから、そういう題材に敢えて取りかかるのもいいだろう。

ラストのオチも『サイボーグ009 超銀河伝説』をわざわざ劇場で観た人間からすれば非難するほどの話ではない。原作のアレを使いたかったんでしょうとか、フランソワーズが宇宙空間に漂ってた2人を回収してもらって復活させたんでしょとか、もはやどうでもいい。

それよりも残念なのはひとえに構成の拙さにつきる。

途中で神はどうとか語り始めるのはいいんだけど、前後の会話のテンポと明らかに異質である。小出しにしていきゃいいものの「彼の声」ばっかりで具体的な話はまとめて004にさせている。しかも一ヵ所にまとめて。押井監督の『Avalon』の歌のシーンに匹敵するテンポの悪さと、大した意味のなさ。いや、言いたいことはわかる。わかるんだけど、何もそこでまとめて全部説明することはないだろう。ダサい。ダサすぎる。しかもいろんなところから小難しい言葉を引用してきましたよ感満載である。

小賢しいの一言に尽きる。

009ファンだからというのではなく、9人のサイボーグ戦士を出すのなら、それぞれの見せ場を作ってはどうかと。それも「語り」に重きを置きたければ「語り」の見せ場を、「動き」に重きを置きたければ「動き」の見せ場をそれぞれに与えれば、初見の観客も「ああ、彼らはそういう人なのね」というのがわかった上に、関係性やドラマの中にあるテーマへの賛同者、反対者、不問者に分かれてそのいずれかに観客は感情移入しやすくなるわけだ。

あそこまで00メンバーの説明が最小限だったということは、旧来からのファンに向けた作品ととれなくもないが、いずれにせよどっちつかずである。

制作者が社会的な、あるいは個人的でも構わないけど、なんらかのメッセージを伝えたいと思うのであれば、もう少しやりようがあったのではないかと思う。ファンに媚びろとは言わないし、観客に媚びる必要もないけど、突き放すというか自分でもわかってないことをなんとなくカタチにしちゃいました、って感じがして、それを莫大な予算をかけて作っていいのかと言いたくなる。

つまり、誰も脚本に対して苦言を呈さなかったのかと。表現媒体こそ違えど脚本やら制作やらをやっている人間からすると、そこがもやっとして仕方がない。もっと言えば、同じテーマで同じ描画手法で、もっと「売れる」作品が作れたろうにと思うと、この作品は残念で仕方がない。

(評価:★2)

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