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[コメント] ゴジラ(1954/日)

ゴジラは、怪獣と呼ぶには、あまりに人間的だ。(Godzilla is too human to be called a monster.) [ラピュタ阿佐ヶ谷]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ゴジラなる怪獣はこの映画の副次的な要素に過ぎない。

この映画には二つのポイントがある。一つは、自然(というよりも更にグローバルな概念)破壊に対する人間へのしっぺ返しと、そのしっぺ返しについての人間側の反応だ。

日本に上陸したゴジラは、まず鉄道と橋梁(ロジスティクス)を破壊、続いて高圧電線(エネルギー)とTV塔(マスメディア)を破壊していく。見事なまでに公共資本やライフラインを狙って潰していくゴジラは、人間、特に自然破壊を推し進めてきた現代人が必要とするもの全てを、我々から取り上げていくわけだ。それは、単なる作用と反作用というよりは、まるで人間が罰を受けているように見える(どうでもいい話だが、有楽町を火の海にしたゴジラも、帝劇と東宝本社ビルは壊さなかったね)。

ゴジラは怪獣ではない。我々人間の中にある「これだけのことをされて、耐えられる自信が人間にはあるのか」という警告が、たまたまあの形をとって現れただけの話だ。芹沢博士は、だから最後にゴジラと心中する道を選んだのだ。

もう一つのポイントは、唯一の被爆国である日本の、核への静かな抗議である(以下の文章は末尾に英文を付記する。文法ミスはご愛嬌)。

この映画が作られてから半世紀経つ今になっても、世界には5つの核保有国(とそれ以上の潜在的核保有国)があり、2000回を超える核実験の実績があり、2万発とも3万発とも言われる数の核弾頭がある。

世界は何をしているのだ? ゴジラのために研究成果と自分自身を捧げた芹沢博士の姿を見て、世界は何も感じないのか?

――――――――――――――

(English translation follows)

This is NOT just a monster movie.

It is a film in which Japanese filmmakers raised quiet but firm protest against nukes, as Japan has been the sole country to be bombed with a nuclear weapon.

Nearly half a century have passed since this film was made, and nukes stay the same in the world out there. Five countries are in possession of nuke weapons, with an accumulation of more than 2000 nuclear testings and a couple of thousands of nuclear warheads.

The world is not yet awake - ignoring the way Dr Serizawa did.

(評価:★5)

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