不勉強なものでギリシャの現代史はろくに知らなかったが、主人公のエレニを見ていれば、その悲しい物語は十分に伝わってきた。

難民として村にやってきた少女エレニは、成長して村を出て多少は幸せな人生をつかみかける。だがひょんなことで村に戻ることになり、さらにその村をまたも出ることになったエレニ。彼女の人生は旅の連続であり、それはそのままギリシャの浮き沈みの歴史でもある。

エレニはその後の戦争によって、愛する者たちをすべて失ってしまうが、しかし彼女の、ギリシャという国の旅はまだまだ終わらない。この悲しみを乗り越えて、ギリシャがどう成長していくか。それは、この『エレニの旅』に続く続編で明かされるはずである。

相変わらず執拗な、しかし奇跡的な長回しや、タルコフスキーを彷彿とさせる画作りのせいだけではなく、三部作の1作目としては申し分のない作品だ。2・3作目がどうなっていくのか、目が離せない。