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[コメント] 男たちの大和 YAMATO(2005/日)

当事者ではない人間として言わせてもらうなら、これは鎮魂映画ではあるかも知れないが反戦映画ではない。[慶應義塾大学三田キャンパス西校舎ホール (試写会)]
Yasu

自分が観た試写では、実際の「大和」の元乗組員の方が来場し、舞台挨拶に立っていた。 この方はレイテ沖海戦や、東シナ海で「大和」が沈没した際の状況を事細かに語った後で、こんなことを話していた。

「仲間の乗組員の大部分が亡くなられた一方で、おめおめと生き残った私は、終戦後も数年間罪の意識を抱えていた。今では、こうして当時のことを現代の皆さんに伝えていくことが、亡くなっていった仲間への手向けと思っている」。

この方をはじめ、生き残った元乗組員の方々は本作の原作小説にも協力されているそうで、それを聞いた後で本作を観ると、なるほど、確かに東シナ海に散っていった乗組員たちへの鎮魂の想いが強く感じられるのだ。特年兵たちは憧れの「大和」で尊敬できる上官に付きたかっただろうし、幼なじみに「死んだらいけん!」と言ってほしかっただろうし、見送りにきた母親に抱きついて別れを惜しみたかっただろう。穿った見方かも知れないが、もし彼ら「大和」の英霊たちがこの映画を観たらきっと満足するだろう、そんな印象すら受けた。

しかし、元乗組員の方々を非難するわけでは毛頭ないのだが、この作品がその「鎮魂」以上の要素を持っているようには思えない。何しろ、この映画の作り方は(他の方も指摘しているように)昭和期に製作された戦争映画と全く変わっていない。さらに言えば、戦時下に作られた戦意高揚映画と共通する部分もある。敵の姿を全く出さない、その代わり銃後の女性を大きく扱い、それによって兵士たちが「自分たちはこの人たちを死んでも守らねばならぬ」と自然に思うようになるという流れだ。見ようによっては戦争否定・肯定、いずれにも取れる内容と言える。本作の製作記者会見で、主演俳優の2人が「もし戦争があったら行くか」と聞かれ、2人とも「家族を守るためなら行く」と答えたという事実が、何よりの証明である。

そんなわけで、この作品の製作意図には諸手を挙げて賛成とは言いかねる部分もあるのだが、米軍の砲撃を四方八方から浴び、炎をあげ、苦しみに悶えつつ沈んでゆく「大和」の姿はさすがに圧倒的であった。この箇所だけでも、+1点。

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最後に蛇足ながら…おいお前ら何度も言わせんな!それは海軍の敬礼じゃねェんだよ!(特に仲代達矢、あれで元軍艦乗りとはとても思えない…)

(評価:★3)

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