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[コメント] 彼岸花(1958/日)

赤い絨毯、赤い看板、そして赤いヤカンなど、赤の色が目立つ映画。『彼岸花』というタイトルからして赤い。[アテネ・フランセ文化センター]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主題は『晩春』・『秋日和』・『秋刀魚の味』と同じく、適齢期の娘を嫁にやる親の話。しかし、これら三作と違い、本作の親は娘の結婚に当初は反対である。逆に、最終的に娘が嫁にいってしまった後、三作では親に寂しさが襲ってきたのに対し、この作品では親はかえって安心しており、観客に重苦しい印象を与えない。これが、本作が三作とは対照的に、いい意味で毒にも薬にもならず、楽しんで観ていられる理由である。

前作『東京暮色』が不評だったためか、あるいは山本富士子を大映から借りてきたせいか、はたまた初のカラー作品のためなのか、小津安二郎監督はこの作品をうわべだけでなく内容もパーッと華やかなものにしようとしたのではないだろうか。

モチーフはいつもの親子もの、手法もまったく変わらないローアングルの固定ショット、それでも仕上がった作品は、いつもの小津調とはこれほどまでに違う内容になっている。やろうと思えば、同じ材料でもガラリと変わったものを作れる稀有な才能。これだから小津はやめられない。

(評価:★5)

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