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[コメント] ストーカー(1979/露)

タルコフスキーの遺作『サクリファイス』がベルイマン的であるならば、その徴候はここから始まっていたと見るべきだ。[Video]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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最初は、SFの体をなした体制批判かと思っていた。すなわち、「ゾーン」を自由主義の理想郷と見立て、ストーカーはその理想郷へ人々を案内するガイドなのだと。

しかし、話が進むにつれて、そんな安易な解釈は通用しないことがわかってきた。何しろ「ゾーン」は侵入する者の意識を読み取り、それによって形を変え(まるで『惑星ソラリス』だ)、侵入者を選別する。こうなるともう考えられるのは一つしかない。「ゾーン」への侵入は、神、もしくは内なる信仰への旅なのだ。

「ゾーン=神の領域」だからこそ「部屋」に辿りつくまで回り道をせねばならず、武器をもって相対することは命取りとなる。何より、社会主義体制(だと思われる)のかの国では「ゾーン」への立ち入り自体が禁止されているではないか。

最後近くなって画面に(遠景として)現れる原子力発電所にも注目したい。原発、すなわち核である。強い力ではあるが、一歩間違えると破滅につながりかねない危険な力でもある。人間が作り出したこの力は、ある意味神の力に近づいたとも言える。すなわち、この力を手に入れた人間は、もはや神を必要としなくなったのかも知れない。だからこそ、利用価値のない「ゾーン」は危険なものとして排除されるべきだと考えられたのだろう。

しかしそれでも、ストーカー(=神に仕える者)は「ゾーン」を肯定する。それは、ある部分は彼がそういう生き方しかできないからかも知れないが、またある部分は「人間が神の力を持つこと」への危惧からなのだろう。ああ、なんてベルイマン的な作品。

…あれ? これってやっぱり、宗教を認めない体制への批判ってことになるのかしらん。

(評価:★4)

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