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[コメント] クリムゾン・リバー(2000/仏)

ミステリを「雰囲気」だけで見せられてもなあ……
crossage

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず、『セブン』を意識しているとしか思えないシーンがいくつかあったことを指摘しておく(逆光で顔の見えない犯人に銃口を突き付けられるシーンや、ひざまづく人物に銃口を向け、撃つか撃たないかでもめるシーンなど)。つまりはフランスでもちゃんと『セブン』並みのサスペンス映画は撮れるのだ、という意気込みと矜持がそこには込められている、ということなのだろう。

聞くところによると、ジャン・レノバンサン・カッセルを「見せる」こと、映像のイメージ美を「見せる」こと、そして「ノリ」を重視するために、映画ではかなりの情報をカットしたらしい。確かに、映像と音響はかなり迫ってくるものがあったのだが……

それにしても、バンサン・カッセルのセリフにもあるごとく、あまりにも「説明が足りない」のではないか? 仲間に何の説明もなく一人で勝手に捜査を進めてしまう敏腕ワンマン警部の寡黙ぶりも、もったいぶらずに早く情報を提示してほしいという苛立ちのバイアスが見る側にかかってしまうから、人物的な魅力として全く迫ってこない。ぶっちゃけて言ってしまえば「カッコつけてねぇでとっとと情報を流せこの野郎!」としか思えなかった、ということ。また仮に、この主人公の「寡黙ぶり」が、オーディエンスへ流す情報を小出しにするための手法として用いられているのだとすれば、それはそれで方法論的にあまりにも稚拙すぎやしないか、とも思う。

結末はともかくとして、細部に張られた伏線は全く活かされることなく中途半端に放置されていたり、オーディエンスへの情報の提示の仕方もまずかったり、全体的に稚拙な部分がまず目立ってしまうので、肝心の映画それ自体の「雰囲気」が全く楽しめなかった、というのが正直なところ。そもそも、サスペンス、というかミステリを「雰囲気」だけで見せられてもなあ……。

何より、何の伏線も張られないまま結末になっていきなり「あのオチ」を持ってくるのは、ミステリの手法としてはあまりにもひどすぎやしませんか?

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補:2001/02/14 バンサン・カッセルの登場シーンがカッコ良かったのを思い出し、☆追加。

(評価:★2)

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