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[コメント] スパイ・ゲーム(2001/英=米)

スリラー映画としての構成を破綻させてまでアピールしたかった、ロバート・レッドフォードの「俺節」。
crossage

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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捕らわれたブラッド・ピットの処刑までのタイムリミットが刻々と迫っているというのに、ブラピを救出するか否か、会議室で繰り広げられているのは、その虚々実々の駆け引きではなく、ブラピとロバート・レッドフォードとの出会いから今日に至るまでを追った回想シーンばかり。昼飯食いながらのんびりと。スリラー映画としては致命的な構成、緊迫感も何もあったもんじゃない。おいロバート、お前ホントにブラピ助ける気あんのか? ていうか、なぜわざわざこんな無理のある脚本&構成にしちゃったのか?

ここで私は推測する。この映画の制作にあたり、制作者サイドに突きつけられた注文はおそらくこうだ。ブラッド・ピットとロバート・レッドフォード、ハリウッド正当派の系譜に連なる二大スター夢の競演。しかし、若者層へのウケを考えればもちろんブラピにも活躍させなけりゃならないが、オイシイとこ取りはあくまでロバート・レッドフォードに。もう歳が歳だしアクションは難しいけど、それでもなんとか先輩に花を持たせるお話にすべし。

そのような裏事情(?)のもとに書かれた脚本は、ハリウッド若手最筆頭たるブラピを、現役第一線を退いた重鎮OBのロバート・レッドフォードが一肌ぬいで助けてやる、というプロットで、しかも、ブラピの活躍場面を過去の「回想」のなかに閉じこめ、ロバート・レッドフォードの活躍場面を現在時制に持ち込むことによって、後者を引き立たせるという効果まで狙ったものだった。その意味では、そうとうによく練られた絶妙な脚本&構成だったわけだね。単に二大スターを競演させるだけなら、他にいくらでもお話の作りようがあるわけだしね。ベテランと若手、息のあった敏腕諜報員コンビが力を合わせてバリバリ事件を解決する!とかさ。

血気盛んな若造のスパイ&アクションよりも、CIA重役陣を向こうに張って老獪に立ち回る一匹狼のいぶし銀の美学! スリルとかサスペンスなんかは二の次、スリラー映画としての構成を破綻させてまで見せたかったのは「ひよっ子よ、まだまだだな」と言わんばかりのロバート・レッドフォードの「侠ぶり」「俺節」。

しかも、CIAの定年が55歳だとすると、この映画の時代設定は冷戦終了直後の91年なわけだから、なんとロバートが演じていた役は、1937年生まれのロバート本人とほぼタメということになる。となるとそうか、これはロバート・レッドフォードの俳優としての「まだまだ現役バリバリ宣言」でもあったということか!

(評価:★4)

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