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ジェリーさんのコメント: 更新順

★22046(2004/中国=仏=独=香港)抑制の効いた、たゆたいの美しさの極北を見せた『花様年華』の続編がこの愚作とは!リー・ピンビンの不在はこんなにも大きいのか。画面の外にあるものを黙示する力を欠いた近接撮影中心の画面の中で、俳優達の演技が伸びやかに羽ばたかない。もったいない。[投票(1)]
★4ヤンヤン 夏の想い出(2000/台湾=日)登場人物の心に去来する繊細な感情をキャメラで誇張せず、背景と人物がユーモラスにその存在を響かせあう運動の一こまとしてすばやく小さく軽く素描する知的洗練。高架線の下でキスを交わす男女の背後で切り替わる信号の色とタイミングで男女の心理を表現するワンカットの魔術。[投票(3)]
★4太陽はひとりぼっち(1962/伊)中心地域の稠密感と郊外の人気(ひとけ)乏しさの描き分けが、復興途上中の国家に潜むねじれ感の表現として鮮烈。社会の回復と同時にきざし始めた過剰な未来期待と未来不安は我々日本人にも無縁ではなかったもの。この不安の影の下にある男と女の姿が切れ味よく撮られている。[投票(2)]
★2ニライカナイからの手紙(2005/日)泣かせることに性急過ぎる浅薄皮相なストーリーを除いて評価すれば、ラストの蒼井優南果歩とのカットバックのテンポ感と、島と都会の光の捉え方のきっぱりとした違いは悪くない。弱い脚本をものともせず蒼井優がこの時代錯誤ドラマの中で美しく光る。[投票]
★3百万弗の人魚(1952/米)空中や疾走する車中という空間状況を、撮影上の困難としてではなく魅力の核として映画は育ってきた。それでも空気の欠如という決定的一因により次元が違う困難さを伴う水中撮影は映画にとって大きな壁だった。そこを突破したのがエスター・ウィリアムズ。記念碑的に奥深いレビューを堪能しよう。[投票(1)]
★4あの夏、いちばん静かな海。(1991/日)誰も作らなかった。どこにもなかった。抒情的でひたぶるに暖かいサーフィンにまつわる友愛の風物詩。透徹した観察力と、肩に力を入れない運動神経の掛け算が生んだ宝石のような作品で、主役が喋らないということで映像の雄弁性が二倍にも三倍にも増している。[投票(2)]
★3栄光何するものぞ(1952/米)戦争と人間の関わりあいの捉え方の重層性に強く撃たれる一篇。人間一人一人の抱え込む矛盾の幅が実に大きいがために、好戦映画、反戦映画のレッテル張りを拒否するスケールを持つ。人格の一貫性などジョン・フォードにとって大事なことではないようだ。[投票]
★3ヒット・パレード(1948/米)奇妙な男集団の中にやってきて秩序を霍乱する美女。『ハタリ!』の原型ではないかと思うくらいに構造がよく似たハワード・ホークス好みの状況喜劇。初期設定を考え抜いてからは理詰めの予定調和的展開になるのだが、それでもおかしいという奇跡が現出している。[投票]
★2東京マリーゴールド(2001/日)一種の恋愛ケーススタディ。ケースとしての出来栄えは悪いが、エリコなる薄っぺらい人物を冷静に見切った上で深みと身体性をもたせリアリティ溢れる人物に仕上げてしまった田中麗奈の理知の力は高峰秀子に匹敵する。人の住む街としての東京の何と美しいこと。[投票(2)]
★3ベニーズ・ビデオ(1992/オーストリア=スイス)映画においては時間とは俳優の動作の関数である。その動作の殆どが寝る、食う、書く、観る、拭う、撮るの6つの少年の動作に尽きることと、映像内映像の意図的な多用で動作が徹底的に断片化されていることで、映画内時間の蝕まれ方のただならなさが伝わってくる。[投票]
★3ストロベリーショートケイクス(2006/日)ショットからショットに移るときに軽く驚かせていく演出が好ましい。淡々と女性たちの日常を描いている様だが実は偽装で、誇張気味に痛々しい風景を観客の眼に焼き付けていく。濃い塩味を4人の女性のエピソードに拡散させて薄める手練があざとく巧妙なのだ。[投票]
★3オール・ザ・キングスメン(1949/米)ハスラー』でロバート・ロッセンはだらしなくウイスキーを呷る男を実にうまく撮っていたが、本作でも何かを得るために何かを失うというモチーフと酒のだらしなさが作品世界の中で強く繋がりあっていて、そこに紛れもないロッセンの刻印がある。荒削りだが秀作。 [review][投票(1)]
★4接吻 Seppun(2006/日)ストーリーだけをたどると思いのほかにセンチメンタルなラインが浮上してくるが、フィルムに焼き付けられたのは望遠レンズにより圧縮され息苦しさを帯びた登場人物間の距離感と、風景の平面性をひたすら強化する効果的な光源としての曇天。棄てられた者たちの全否定の叫びのクリアな形象化。[投票(1)]
★2笑の大学(2004/日)ほとんど二人劇といってよい題材で、演技最中の俳優の視線の交錯が演劇以上に強調される点、やはり映画だなと思わされるところは多いのだが、演劇的テーマが動く写真としての映画の本質を活かしきった感じはなく、演劇の映画化の消化不良感がそこかしこに残る。[投票(1)]
★3愛のアルバム(1941/米)実子を持つことの出来なくなった夫婦が養子をもらって育てる哀しみと喜びを描くという筋はいたってシンプル。判事の前で切々と訴えるケイリー・グラント の演技にはほろりと来る。日本赴任中の地震のシーンのリアルさはわが被災経験に照らしても納得もの。 [review][投票]
★217歳の肖像(2009/英)愛すべき女優の誕生に立ち会える幸せ。小資本の映画のようだし、企画も粒が小さいが、これだけ微妙なニュアンスの微笑を使い分けられる新人は珍しく、大きな可能性を感じる。台詞に頼らない表現力が武器だ。第2のオードリーという称号は早く払拭したほうが良い。[投票]
★1パッセンジャーズ(2008/米=カナダ)某作品との類似によって点が低いだけでなく、サスペンスの強度、馬鹿にしか見えない主役を演じるアン・ハサウェイの一本調子演技他全て重なっての1点。結末が分かってから改めてパトリック・ウィルソンの茫洋としたスター性の乏しい顔を見ていると、適役だねと皮肉の一つも言いたくなった。[投票(1)]
★3イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)ロシアの過酷な冬の中で鍛え上げられた筋金入りの組織悪の凄みが、香水のように男たちの体から立ち昇っている。男達の整髪料臭さ、ナオミ・ワッツの石鹸臭さ。本作品は嗅覚を刺激する。それは一級品の証だ。性器晒しての取っ組み合いは、その重量感において比類ない。[投票(3)]
★3おくりびと(2008/日)本木雅弘のコミットの高さと、存在感大きい笹野高史山崎努、また引き出しは少ないものの懸命な広末涼子らの演技で見せてしまう。しかし正体は通俗的な娯楽映画なのだ。納棺士の前職をチェリストにした設定は映画的に実によく効いている。[投票]
★3空気人形(2009/日)高い批判性と映像の希少性とが無理なく共存した作品。人間と同じ心を持った無生物という設定の論理的な帰結として身体感覚の欠如した主人公の起こした悲劇を通じて、同じ身体感覚を有するはずの人間同士がまともに他者理解できなくなっている寒々とした現実を逆照射する。 [review][投票(5)]