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ジェリーさんのコメント: 点数順

★5四川のうた(2008/中国=日)眼前する現在だけをフィルムに収め、過去の一切合財が登場人物たちの語りと表情の向こう側にしまいこまれている。イメージに「しない」ことで、過去が眼前する現在に圧倒的な重みとともにのしかかっていることが分かる。過去は今にしかないというパラドックスの鮮烈な映像化だ。[投票(1)]
★5パンチドランク・ラブ(2002/米)サスペンス映画の緊張感を常に一触即発を予感させる会話の間合いの中に確保し、喜劇映画らしい哄笑をキャメラワークのみによって現出し、バイオレンス映画の爽快感を生半可でないスピードの画面転換の中に息づかせ、かつ心地よい暖かさを全体に漲らせた恋愛映画。傑作だ。[投票(1)]
★5ラヴソング(1996/香港)素人向けのベタな映画のようでありながら実は深謀遠慮の行き届いた作品。マンハッタン島の大渋滞の中で、自転車を滑走させる着想はご本家アメリカ人は思いつくまい。動き行く中国の第2の黎明期に、動き行く青年達を活写した1996年ならではの爽やかな傑作。 [review][投票(1)]
★5青の稲妻(2002/仏=日=韓国=中国)2001年の中国の国家規模の変化をニュース映像を通じて跡づけつつ、社会の変化とはいささかの接点もない、結果だけしか求められない無軌道無気力の青年像を交錯させ、見つめ続けるのが痛ましいような亀裂や震撼を画面に走らせる対位法の骨格の太さ。 [review][投票(1)]
★5ボーイ・ミーツ・ガール(1983/仏)リュミエール兄弟の時代に立ち戻ったかのように素朴に被写体が動く楽しさが横溢する。大胆でクラシカルなキャメラ使い。斬新な突如の暗転。内省的で屈託が多く暗い、つまり凡そ映画に不向きな主人公の数日をここまで面白く見せる力量のレベルは計り知れない。[投票(1)]
★5アタラント号(1934/仏)冒頭、画面の下辺から蒸気が立ち上った瞬間にわが身が快感で総毛立つ。ムルナウの構図感覚に、エイゼンシュテインのクローズアップのセンスと、シュトロハイムの作劇術が統合された傑作。特権的な魅力に満ちたこの船を超える乗り物を後世代の映画作家は作りえただろうか。[投票(1)]
★5嫌われ松子の一生(2006/日)無償の愛の価値と失敗することの価値をきつめの色彩設計と速いテンポの戯画的誇張の哄笑シーンの連打により描ききった。演技ではなく身体によって、取り分け髪型と立ち姿によって松子の核心を掴んだ中谷美紀杉村春子に匹敵するスケールの大きさを示す[投票(1)]
★5悲情城市(1989/台湾)当時の映画界を揺るがしたであろう巨大地震のような傑作だ。暗い青灰色を基調にした静謐な背景の中で女達の着衣や電飾看板の桃、朱、紅、橙が目にしみるように美しい。内容の凄惨さとの際立った対位法。アジア社会の家族崩壊の過程を描いた映画としてアメリカのコルレオーネ家のそれと拮抗しうる。[投票(1)]
★5輪舞(1950/仏)夢幻的な光と影のもつれ合いに誘われて我々の眼差しはレース越しに、あるいは薄暗がりの中で、あるいは鏡像として展開される情事の傍らをゆったりと遊弋する。脚本形式、撮影技術などいまだに前衛性を保ち続けている傑作。女優、男優問わず所作一つ一つが官能的だ。[投票(1)]
★5天然コケッコー(2007/日)過疎の村のそれなりに過酷な現実も描かれているというのに、のんびりとした上質なユーモアがそれこそ映画の中の日向の光のように遍満しているのは、本来ドラマ化すべきところの色づけをひと刷毛、ふた刷毛の淡彩で片付ける山下敦弘の勘のよさにある。 [review][投票(1)]
★5愛を読むひと(2008/米=独)饒舌に陥らないシーン間の空かせ方や決定的な場面での逆光の取り込み具合など美点に満ちた完璧な演出。ケイト・ウィンスレットは非の打ち所なし。背中で人格の最深部まで語っている。ラストにもう一度出てくる教会のシーンで涙をこらえられる人は少ないだろう。[投票(1)]
★5キング・コング(2005/ニュージーランド=米)女を最後まで守ろうとする姿勢において彼は人間の2枚目スターと何一つ変わらない。アメリカ映画の原理を完璧に体現した至高のキャラ。密林と摩天楼とで二度にわたって表現されてもなおマンネリにならない高低と落下の表現は空前絶後。空を飛ばぬ生き物ゆえにスリルが増す。[投票(1)]
★5緑色の髪の少年(1948/米)スーパーマンといいバットマンといいスパイダーマンといい、アメリカ映画においては孤児たちが主役となるとき、選ばれた能力をもつ「無徴」の者だけが採り上げられてきた。1948年という時代において、選ばれなかった「有徴」の孤児を採り上げた本作の視点は驚くばかりに独創的だ。 [review][投票(1)]
★5マルクス一番乗り(1937/米)ハーポのジャズへの接近は快感を超えて崇高ですらあるし、スプリンクラーがしぶきを上げる診察室に馬が突如登場するシーンはダリをも凌駕する。荒唐無稽のアルカディアが70年も前に完成していることの驚き。映画は進化しないと断言したくなる。[投票(1)]
★5マルクス兄弟オペラは踊る(1935/米)チコのピアノ芸に我を忘れて笑う子供たち。スクリーンのこちら側にいるはずの観客がスクリーンの向こう側にもいるかのような錯覚にわが身が総毛だつ。現実には決して起こりえない時空を実際に撮った画面で見せ付けてくれる3兄弟の才能は、まさに唯一無二のものだ。[投票(1)]
★5砂漠の鬼将軍(1951/米)アバンタイトル部でのアクションによるサスペンスフルなストーリーへの引き込み、原作者の登場から主役の初登場にいたる流れの手際、水際立った簡潔さに煌く会話、将軍や政治家たちのキャスティング、どこをとっても引き締まり、知性と緊張感に満ちた作品。 [review][投票(1)]
★5ピアニスト(2001/仏=オーストリア)じっとりと湿った冷ややかさが画面に漲る。シューベルトのように極端から極端に走ることしかできない女が、密室の中で男と無器用にもゼロから性愛の規則を作り出して行く生々しい過程の描写がすばらしい。世俗的希望を捨てた無償の感情を捨て身で表現したイザベル・ユペールに脱帽した。 [review][投票(1)]
★5長い灰色の線(1954/米)無声映画のようなスラップスティック演技。機関銃のような会話劇。シネマスコープの幅いっぱいを使った構図。常にスペースに人が入っては次のスペースを生んでゆく動きの淀みなさ。相矛盾する要素が一つの器に渾然と融けあい揺るぎない統一体が創られている。[投票(1)]
★5我等の生涯の最良の年(1946/米)諦念と落胆の紙一重のところで途方もない楽天性が貫徹していく素晴らしい映画。グレッグ・トーランドの深い被写界深度の清澄なキャメラが、1日24時間の時刻を正確に描き分ける。それは、冒頭延々50分にわたり克明に3人の復員者の1日を描くという斬新なプロットの成立に必須の技術なのだ。[投票(1)]
★5愛する時と死する時(1958/米)世界は信じられないような偶然にあふれていると同時に、誰一人逃れられない宿命の罠もまたあまた仕掛けられているという苦い諦念が、フィルムから濃く滲み出す。米国民に戦争映画の作り物でないリアルなドイツ人を描いて見せた心意気に、私の心臓も鳴動しっぱなし。[投票(1)]