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ジェリーさんのコメント: 点数順

★3クラッシュ・バイ・ナイト(1952/米)原作改変をもちろんご都合主義という人はいるだろう。しかし、肉が削ぎ落された骨格の露わなメロドラマの地平で、身もふたもない感情を論理として表白しあう機械仕掛けの人形たちのSF映画としてこの映画を観賞するとき、この改変は些末なものだと確信できる。[投票]
★3堕ちた天使(1945/米)女たちの弱さと、女たちの弱さに巧みに取り入り、寄生していく男たちの行動の狡さが、無秩序にまじりあって濁っていく気持ち悪さがうまく出ていて良い。ダナ・アンドリュースのとらえどころのない爬虫類的な俗っぽさは、素晴らしい。[投票]
★3瞼の母(1962/日)記憶ではモノクロ映画だったのだが。しかし、この色彩映画の色彩設計の杜撰さは何事か。濁ったキャメラにとらえられた原色の不調和に目を背けたくなる。しかし奥行きの使い方に若干新味はあるし、4者4様の老女たちの今の描き方は好きなので、この点となった。[投票]
★3依頼人(1994/米)州知事の地位を狙う俗物検事と、離婚訴訟がきっかけでアル中となり再起を期す女弁護士を描くという今日性描写が、マフィアの秘密を知った少年の人権と身体の保護という基本ストーリーの上にうまく浮かび上がる。マフィア像の典型ハリウッド的それらしさに嬉しくなった。[投票]
★3冬のライオン(1968/英)家庭の中に政治が持ち込まれていく様相が顕わに叙述されている。心理的な駆け引きの細部を、機知と皮肉の効いた科白で聴かせて豪奢なる崩壊を叙述しきった。キャサリン・ヘプバーンピーター・オトゥールの二人の名優の参加で成立しえた作品だ。[投票]
★3関の弥太ッぺ(1963/日)娘の実家探し、盗まれた金の取り返し、兄と妹との再会という序盤のモチーフが中盤で解決されるドラマツルギーは意表をつく。後半、10年という時間の長さを表わす必要のあった演出が総じて弱く、主人公に漂うべきリリシズムがやや不足。それでも中村錦之助は輝かしい。[投票]
★3赤ずきん(2011/米)ヤマタノオロチ伝説を生贄の側から見たような話であるが、結末は大きく異なる。原話からの改変は著しく猜疑心に満ちた赤ずきんという設定は意表をつくが、キャラ造形は失敗。1980年代のスピルバーグ&ゼメキス風の筆触に感じられるのは、主に照明のせいだろう。[投票]
★3裏切りのサーカス(2011/英=仏=独)原作の映像化の忠実度には感服した。ジョージ・スマイリーを演じるに相応しい俳優をアンソニー・ホプキンスと見ていたが、本作のゲイリー・オールドマンの品性とうら寂しさの出来栄えには言葉もない。しかし、徹底したリアリズムにうまさは感じても切れを感じないのも事実。[投票]
★3旗本退屈男(1958/日)東映の制作システムがはっきりと見える。俳優の持ち味に合った役を設定し演技のしどころを用意することが、映画企画の根幹なのだ。思いやりに満ちた政治的な演技の分配のシステム。本作では両御大の対峙のシーンが、劇的中心となるよう設計されていて素晴らしい。[投票]
★3スパルタカス(1960/米)大史劇をはったりもなく撮り上げた点で好感が持てる。英国系俳優の起用が映画に気品を導いた。本作品はクライマックスの後が殊によく、ラストの別れのシーンは筆舌に尽くしがたい。しかし主人公とその妻と執政官を一つのショットの中に収めなかった演出はハリウッドらしくない逃げだ。[投票]
★3縮図(1953/日)前借金を返すために若い女が無給で働く図式は今でも社会に現存する。こうした社会で強くなっていく姿を、乙羽信子が堅実に演じる。その姿が仕事場と家との往還、すっぴんと化粧の往還の運動としてそれこそ「縮図」のように活写されている。ふと忠臣蔵のお軽を思い出した。[投票]
★3ラヴ・ハッピー(1949/米)ストーリーによるフォルムのいましめにどこまでも抵抗する三兄弟のボードビル芸。映画の世界に入るべきでなかった超越的天才たちの記録として貴重だ。ハーポ・マルクスの何でも出てくるコートには笑う。一方、グルーチョ・マルクスの普通のメイクは許しがたい。[投票]
★3サイコ(1998/米)真似るほど違いが際立つ映画の世界で、ガス・ヴァン・サントが完全再演に挑戦した。100%の確信を持って違いを徹底したのが、モノクロからカラーへの改変だ。ジャネット・リーの衣装の白が、アン・ヘッシュでは赤に変わる。血の色と同じ赤への改変効果に恍惚となる。[投票]
★3無法松の一生(1958/日)男と女の複雑怪奇な感情の交錯というか表と裏の二重性がグロテスクに浮かび上がる映画と解釈すればテーマは今なお斬新だ。そしてこうした心の動きを肯定的に受け止める懐の深さが映画から伝わる。高峰秀子は、男の欲望に対する小動物のような警戒心を表現させると抜群の冴えを見せる。[投票]
★3ドラゴン・タトゥーの女(2011/米=スウェーデン=英=独)映画に必要な奔放さが失われているのが失点だが、スウェーデンの冬の黒灰色の中に黒尽くめのルーニー・マーラを配した造型センスは推したい。凍て切った空気感描写の中に、丁寧に描かれた彼女の内面の荒みと悲しみがこの映画の基軸のトーンとなっている。[投票]
★3セカンド・コーラス(1940/米)初期RKO作品や後期MGM諸作と比べるとフレッド・アステアの踊りがいずれも小振りなだけにやや見劣りするが、それでも凄いものは凄い。ポーレット・ゴダードの清潔感ある美しさも見もの。パーティー会場のセットがどれも大変見事な出来。[投票]
★3駆逐艦ベッドフォード作戦(1965/米)リチャード・ウィドマークの演じる艦長がすごい。『ケイン号の叛乱』のボガートをしのぐリアリティ。それに脇がいい。ドイツの准将と、アメリカ国籍の新聞記者とベテランの医師。艦長の非・適材適所のはずれ振りを際立たせる「零度」として完璧の設定だ。 [review][投票]
★3ラジオ・デイズ(1987/米)ノスタルジアという感覚が実世界の感情ではなく、絵画や音楽、演劇、映画などの芸術の享受活動全般に見られる、架空の世界の枯れ尾花への反応的感情であるという事実は若いときはともかく今の歳になれば当然のこととして理解しているはずなのに、この幻灯機のような甘美さにそれでもしびれる[投票]
★3アレクサンドリア(2009/スペイン)歴史を俯瞰する意志が、宇宙空間から見た地球という映像で何度も表わされるが拙劣。何の効果もない。しかしそれでもこの転換期に、ある別の転換期のモデルを表現しようとする誠意は受け取った。世相風俗描写が、デミル/ワイラー時代を越えた点は紛れもない進歩。[投票]
★3モン・パリ(1973/仏)贅沢な映画だ。名優たちのいつもの使い方をがらりと変えた。ある特殊なシチュエーションのもとで、それ以外の細部は結構真面目に作るという基本を徹底しているから実におかしい。フランス語に堪能な人ならもっと笑っているだろう。[投票]