コメンテータ
ランキング
HELP

ジェリーさんのコメント: 投票数順

★4怒りの日(1943/デンマーク)魔女という徴(しるし)が機能するシステムが恐ろしい。司祭の家の室内は石牢のように抑圧的だ。各人の部屋のドアは決して同時には開かれない。姑が消えると嫁が現れ、父が引っ込むと息子が登場する。一方で燃え盛るような青草に満ちた屋外のエロチックさ。こうした対比を静謐なトーンに収めて見せる腕の冴えに唸らされた。[投票(3)]
★3THE BATMAN ザ・バットマン(2022/米)腐敗と悪が、悪人の属性としてではなく、脈打って生きている巨大なシステムとして描かれる。これは『ダークナイト』すら達しえていないヴィジョンだ。悪人の誰が死のうが、誰に替わろうが小動ぎもしない構造としての悪がリアルに迫ってくる。ヒーロー映画のレベルをはるかに超えるみごとな成熟だ。[投票(3)]
★4万引き家族(2018/日)絵に描いたような家族のふりを少しでもしている人が見たら、ちりちりと胸が痛むであろう映画。法的には家族と呼べない、よるべない者たちがつかの間家族らしさを作る奇跡。生き物としての人間の原質を見る。涙を流す安藤サクラの正面ショットがこの作品の白眉だ。[投票(3)]
★5ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018/米)スパイ・アクションとしては最高の出来栄えだろう。どこまでが生撮りでどこからが特撮なのか判別したい気も失せるくらいシーンに没頭できる。ロケ地の協力をここまで引き出せるリーダーシップにも感動した。色事とグルメに走らないストイックさが、007シリーズとの最大の違いか。[投票(3)]
★3ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017/スウェーデン=独=仏=デンマーク)予測はずれの事態の連続に戸惑うのは主人公だけでなく、本作を観る我々も同様。可笑しくもあり怖くもある両義的状況は、他の映画では得られなかった新鮮な体験だったが、ここまで長尺にされると、鑑賞後の疲れがめっぽう溜まる。構図の素晴らしさは超A級。[投票(3)]
★415時17分、パリ行き(2018/米)原作者と映画との関係のありかたが一挙に革新された。ワンアンドオンリーの形だろう。実録をフィクション視してきた我々の眠った脳をがつんとぶったたく。美談の陰にある凡談を丹念に描きながら、このなんという温かさ。このあと原作者たちはどうなっていくのか、余韻は尽きない。[投票(3)]
★3アナと雪の女王(2013/米)口パクの唇の開き具合や形が、発音と対応していることに単純に感動し、北の氷の宮殿の山からアレンデール城の方を俯瞰する描写に単純に感動した。それだけだ。しかしそれだけでもすごいことだ。物語に面白さはなく、Boy meets girl ストーリーを再生産してくれた方がよい。[投票(3)]
★3ゼロ・グラビティ(2013/米)この空間モデルがヴァーチャルとリアルの二項対立を無効にする。動くキャメラでもって空間を動かして見せた溝口的時代の次の時代をこの映画は圧倒的な皮膚感覚を伴って予感させた。映画はキャメラを通過しない映像を届けることに初めて成功したかもしれない。[投票(3)]
★3ダージリン急行(2007/米)狭い場所と左右対称の構図への特殊な偏愛がこの作家にある。本作と『ライフ・アクアティック』を観ただけの印象で語るのは気がひけるのだが、列車と船というキャメラを据えるには少し難儀な背景を殊更設定したがるこの嗜好には、当然ながら映画作家としての矜持があるはずだ。 [review][投票(3)]
★5弥太郎笠(1960/日)隠れた傑作。マキノ正博の脚本の把握力、ストーリー全体の構成力、観客のエモーションのマネジメント能力、編集の簡潔性と画面転換の的確性に加え構図、明暗、カッティング・イン・アクションの正確さどれ一つとっても並ぶもののない才能が煌く。 [review][投票(3)]
★4CURE/キュア(1997/日)通常一般の人には未開であるところの、黒々とうずくまる狂気の領域を丁寧に丹念に可視化した秀作。肉を、ラグビーボールを、空き缶などを「投げつける」行為として、人間の行動の短絡化を象徴して見せた手並みは素晴らしい。 [review][投票(3)]
★5ウンベルト・D(1952/伊)貧しさを身体の痛みとして表現するという戦略が、あえて演技の零度をマークする素人を起用するという戦略と一体化し、圧倒的な明快さを生む。極端な遠近法的風景の消失点から表れるのは女家主や機関車など、この映画の主人公にとって禍禍しいものばかり。そして、 [review][投票(3)]
★5トイ・ストーリー3(2010/米)本シリーズの天才性はこの状況とキャラクター設定にあるが、この実に魅力的な設定を継承しつつアンディの成長という玩具にとって宿命的なテーマを導入することで、玩具たちが文楽人形に匹敵するほろ苦い哀感を湛える受容器に成長している。 [review][投票(3)]
★5元禄忠臣蔵・後編(1942/日)溝口は忠臣蔵を私怨の劇として撮ろうとしたのではなかった。公的な場における公的な儀式の主宰者として赤穂の侍達を撮ろうとした。そのために溝口マジックがどのように発動するか。我々は、中庭と屋根上と廊下に着目しなければならない。 [review][投票(3)]
★5マン・ハント(1941/米)再見後3点を5点に付け直した。追い詰められていく男の心理、人格、知性、感情の表現が完璧だ。狩をする森の木漏れ陽、要塞の一室での影の扱い、若い女のアパートメントの窓から射しこむ街灯の明暗の調節、男と女が離れていく橋に漂う霧の処理など目を洗うような美しさ。 [review][投票(3)]
★4教授と美女(1941/米)セルフ・リメイクよりも数段優れている。キャメラ直前にすえられた人物の遠い後ろに数名の人物が小さく収まるパンフォーカス画面を観ていると、ホークスの撮影監督の使い方の融通無碍なうまさに圧倒される。ここにおいてもホークス的一匹狼が何人も登場する。 [review][投票(3)]
★4アンナと過ごした4日間(2008/ポーランド=仏)独身の女性の寒々とした部屋の空気を描くという斬新な主題提示を目の前にして、我々は愚かにも戸惑うしかない。しかしそれでよい。映画とは学校だ。知らなかったことを学べばよい。女の住む寮と男の住む家の距離は100点の正解。その二つの家の間に降る雨のなんというリアルさ。[投票(3)]
★4ヤンヤン 夏の想い出(2000/台湾=日)登場人物の心に去来する繊細な感情をキャメラで誇張せず、背景と人物がユーモラスにその存在を響かせあう運動の一こまとしてすばやく小さく軽く素描する知的洗練。高架線の下でキスを交わす男女の背後で切り替わる信号の色とタイミングで男女の心理を表現するワンカットの魔術。[投票(3)]
★3イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)ロシアの過酷な冬の中で鍛え上げられた筋金入りの組織悪の凄みが、香水のように男たちの体から立ち昇っている。男達の整髪料臭さ、ナオミ・ワッツの石鹸臭さ。本作品は嗅覚を刺激する。それは一級品の証だ。性器晒しての取っ組み合いは、その重量感において比類ない。[投票(3)]
★2ターミネーター4(2009/米)映画が不断の新陳代謝である事を制作者が想起し続けているかぎり、志だけはその作品を讃えてよいと思うのだが、その新陳代謝を失念した連作は単独作以上に始末に終えない。前作との世界観的スムーズネスだけが見ものとなった作品を、正直かばいようがない。[投票(3)]