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ジェリーさんのコメント: 投票数順

★5サンタクロース殺人事件(1941/仏)隠れたファンタジーの傑作。宝石をめぐる殺戮事件が陰惨さをにじませずに、心温まるクリスマス習俗の中に昇華され、絵本を見るようだ。フランス高地の深雪の農村風景が目に痛いほど美しい。子供たちの演技が尋常ならざる魅力を放つ。ルネ・フォールの輝くような美貌もまた。[投票]
★4十字路の夜(1932/仏)パリ近郊のうらぶれた街に巣くう「下層」と「異邦」の人物たちのしがなさを、群像劇として提示しているところ、『ゲームの規則』を撮った巨匠の落款まぎれもない作品。ヴィナ・ヴィンフリートの哀切な寄生虫ぶりは、ノワールを彩る数多のファム・ファタールの中でも上位に来る。[投票]
★2マリー・ロジェの秘密(1942/米)早撮り感ぷんぷんの作品。60分間の短尺にストーリーを盛り込みすぎて至って配慮の欠如した作品となってしまった。 登場人物も類型的造形で面白みがないが、かろうじてマリア・ウスペンスカヤに注目。(⇒『哀愁』に出ている!)[投票]
★3面の皮をはげ(1947/仏)暗黒街大立者の味わいを十分に楽しめる作品。昔の女の登場シーンではじんとくるものがある。ただし、ストーリーは底が浅い。やたらに酒場が明るいのも、この手の映画としては場違い感がある。女優二人は魅せる。[投票]
★4誰か夢なき(1947/日)戦後民主主義的婦女子恋愛啓蒙映画。「あるべき恋愛」を謳いあげる。固いセリフ、固い展開には当時の世情や主張が切々と込められており、今となっては芸術としてではなく時代相の貴重な記録映画といえる。この固さに実によく藤田進野上千鶴子 がマッチする。[投票]
★3ハリー叔父さんの悪夢(1945/米)過激なアクションも極端な画面操作もなく舞台劇のように撮られていながら、じわじわと人間の悪意が観客に迫ってくる。ジェラルディン・フィッツジェラルドエラ・レインズが持ち役を交換したかのようなキャスティングになっているが、これがすばらしい効果を生んだ。[投票]
★4アンダーワールド・ストーリー(1950/米)小品ながらも良いのは、登場人物のキャラ描写が一貫しているからである。曖昧かつ狡猾に揺れ動く人間の曖昧さと狡猾さの描き方が的確、というともっと正確だろう。ダン・デュリエのとかげ顔とハワード・ダ・シルヴァのへび顔が役柄にぴたりとはまり、小気味よい。[投票]
★4暗闇に響く銃声(1951/米)各登場人物の描き込みが、ストーリー失速を恐れず丁寧になされている。中でも主人公スペンサー・トレイシーの造形がよい。酔いどれからなんとかもがきだそうとしている男の人生が、彫り深く刻み出される。ジョン・オルトンの完璧な陰影操作が画面を美しく荘厳する。[投票]
★1イット・ケイム・フロム・アウター・スペース(1953/米)出来栄え的には笑い飛ばすしかない有様。カットつなぎのひどさは稀有と言っていいレベル。誰からの視点かがよくわからないショットの存在にもいらつかされた。それでも、アメリカ人の都市伝説としての宇宙人のイメージを伝える貴重な記録ではある。[投票]
★3執拗なサイコ(1950/米)「まっとうに人生と向き合おうとしない男たち」の主題が、博打、酒、胃痛、戦争からの復員などという意匠の下に浮かび上がり、主人公の恋人や寡婦母子の世界との対比がとても鮮やかだ。ヴィクター・ミルナーが撮ると、黒白のノワール的メリハリとはちょっとタッチが違うが距離感の良さが光る。[投票]
★2捕われの町(1952/米)ジョン・フォーサイスがもともと嫌いだが、それでこの点数ということではない。ラストに出てくるキーフォーヴァー上院議員の組織犯罪撲滅メッセージで盛り下げてしまうまでもなく、基本的には退屈な映画である。ただし、広角の深いフォーカスはすごい。[投票]
★3危険な女(1946/米)フラッシュバックのさらに向こうに現在時制と縁もゆかりもないフラッシュバックが存在し、そのフラッシュバックにしか登場しない俳優がいる( ロバート・ミッチャム)という構造の強烈な魅力。完璧に見える女が、実に脆い精神的基盤を抱えている危うさとそういう女に惹かれてしまう男たちの宿命的な弱さがよく描かれた秀作。 [投票]
★2高い壁(1947/米)ストーリーを追いづらいほどシーンが飛ぶので正直わかりにくい。ニューロティック・スリラーには記憶の混濁要素がはいるが、だからこそストーリーの流れはなめらかで透明であってほしい。 どの人物も小物感が強い。病棟内描写のリアリティも今ひとつ感がある。失敗作だろう。[投票]
★3ボディガード(1948/米)小品の価値は、だれないこと、軽快なこと。この鉄則は最低守られた映画。ローレンス・ティアニーは小粒な俳優ではあるが、ボギー並みに悪役も善人役もできる不敵な顔つきの役者で、主役の格を最後まで維持し続ける。砂糖菓子のようなプリシラ・レインと相性もいい。ロケ撮影の乾いた感じは好感持てる。[投票]
★4影を追う男(1945/米)謎が解決されないうちに次から次に新たな謎や正体不明の人物が登場してくる展開は、ハードボイルド映画の典型で文句のつけようがない。瀕死の主人公を助けたのが縁で結ばれた、たった20日間の妻だった女のために主人公が戦う物語展開には心底痺れる。 [review][投票]
★4国境事件(1949/米)メキシコに照りつける太陽はモノクロのフィルムをコントラスト高く灼き上げる。中間色の抜けた白と黒の砂漠の美しさに陶酔する。レタス畑の中で倒れた男に迫るトラクター、泥濘に溺れる主人公。身悶えするような魅惑的なアクションが我々を待っている。必見のB級ノワールだろう。[投票]
★3トゥルー・クライム殺人事件(1947/米)脚本の出来の悪さが、ストレートに作品の質の低さに繋がらないという稀有なケースである。それほど、本作を支えるクロード・レインズの輝きがすごい。しかし⇒ [review][投票]
★3スキャンダル・シート(1952/米)冒頭の2〜3のエピソードで、この映画の登場人物たちのモチベーションがセリフに頼ることなく描かれる。この手際は見事。ブロデリック・クロフォードには類型性を超えた生々しい存在感がある。そのほかの登場人物がややペラペラしており弱点といえる。[投票]
★4裏切りの街角(1949/米)ノワールの巨匠シオドマクの腕の冴えが見事な作品。この裏寂れたどんづまり感なしにはノワールとはいえない。マスクをつけての、催涙ガスの中のアクションは、もちろん、視界が二重の意味で遮られていることを計算の上での演出。先のなさはこうした小演出からも醸される。[投票]
★4ミステリー・ストリート(1950/米)キビキビした撮影の魅力が炸裂した傑作。安手・ご都合主義、あらゆる罵詈雑言が浴びせられることを承知の上でこの作品は好ましいと断言する。ラストの操車場の活劇(これを活劇と言わない人もいるだろう)の安手さとご都合主義にこそ映画の美しさがある。[投票]