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[コメント] 青の稲妻(2002/仏=日=韓国=中国)

2001年の中国の国家規模の変化をニュース映像を通じて跡づけつつ、社会の変化とはいささかの接点もない、結果だけしか求められない無軌道無気力の青年像を交錯させ、見つめ続けるのが痛ましいような亀裂や震撼を画面に走らせる対位法の骨格の太さ。
ジェリー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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それでいてなおかつ、鮮烈な抒情の漲る、ため息をつくしかないショットが随所に表れる。冒頭のビンビンのオートバイ・シーン。チャオサンに殴られて腫れた顔を隠そうとするチャオチャオとシャオジイーが見詰め合うシーン。バスの中でチャオサンとチャオチャオが揉みあうシーン。ビンビンと北京の学生となったユェンユェンが最後に出会うシーンなどなど。日活映画の中に可能性として潜みついにはどの作品からも発酵することなかった抒情(つまりこうした抒情は俗に流れやすく、安っぽさしか生まないということがいいたいのだが)を初めて、青春期本来の持つ哀しみの風韻としてとらえたといえるのだ。こうしたシーンの叙情性があまりにすばらしいので、せっかく企図した対位法の構成を失念させる危険性すら感じさせる。

もちろんエピソードの慎重で丹念な重ね方と重なり具合の非の打ち所のない順番により、対位法の骨格と水際立った抒情とが効果相殺することなく我々に提示されている。とにかく、見て欲しい、と言わずにはいられない稀有な作品だ。

(評価:★5)

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