[コメント] 東京暮色(1957/日)
小津監督の「太陽族」映画としても見ることができるが、やはり、同じ「東京」のつくもう一つの傑作との対比で語りたくなる大作。
『東京物語』が来るべくして来た死をめぐる夏の日の抒情歌だったのに対し、この作品は、突如訪れる死に対する冬の日の問答歌となった。
『東京物語』が別れを「受け入れる」人たちへの哀切な応援歌だったのに対し、この作品では別れを「選んだ」人たちへの厳粛なご詠歌となった。陰惨さはやむない。
「諦念」という言葉で語られることの多い監督だが、この映画では諦念は極北に達しほとんど絶望に近くなっている。しかし、この作品を最後に、小津安二郎はわびさびをも突き抜け、「軽み」に満ちた『彼岸花』以降、作風変遷の最終ステージにはいる。『彼岸花』に登場する同じ有馬稲子のなんという「普通さ」!美しい赤色や黄色が乱舞する、華やかで明るい色彩映画時代への180度の転換。
その意味で、この映画において小津はやるだけのことをやったはずだ。モノクロ画面の黒味の強さは強靭そのもの。
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