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[コメント] ポゼッション(1980/独=仏)

平穏と奔放、遵守と逸脱、貞淑と姦淫、自由と拘束、なんでもいいが人生において必ず直面する二極間対立から逃げ出した人間の先にあるのは狂気だけ。しかし、全うに直面しすぎた人間の先にも同じ穴が待っているパラドックスの怖さ。(あとは余録ですが→)
ジェリー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







広角レンズをつけた手持ちカメラの効果がすごい。リアルで、ドキュメント的な効果がよく出ている。

それに、血の表現がすごくよい。流れる血・噴き出す血・付着する血・にじむ血・たまる血・凝固する血、いろいろな血を映画は虚構として表現してきた。(だれか血にまつわる映画をPOVでやってくれませんか) しかし、こんなにリアルな血は初めて。特に、イザベル・アジャーニの口からたれる血のすごさは、『椿三十郎』のラストの決闘の血煙や、『ゴッド・ファーザー』におけるラスベガスのボスの銃殺シーン(目に銃弾が貫通する)、『サイコ』の殺害シーンにおける、浴槽の排水溝に流れ込む血の接写表現、あるいは、『プライベート・ライアン』冒頭の血潮で真っ赤に染まった海辺のシーンに匹敵する衝撃力を持つ。イザベルの白い硬質の顔の美しさと赤い血の対照が素晴らしく効果的なのだ。血こそ映画の虚構の花。演劇でも、文学でもない映画ならではの表現が多様な小道具。映画作家の創造性が発揮できるポイントである。その意味でこの映画はすごい。

あの軟体動物は何だろう? 脇役として登場し、演技ではなく存在するだけで映画の中における重い位置づけを示しているあの生き物。イザベルのリビドーの象徴表現とする解釈はまず普通に成り立つのだが、あまりにつまらない解釈だ。だれか、よい意見ください。待っています。

(評価:★4)

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