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[コメント] ノルウェイの森(2010/日)

トラン・アン・ユンが撮影監督としてリー・ピンビンを招来し、画面ごとに調性を目まぐるしく変化させ、重い主題を鷲掴みにした気合を評価。演者にかかる負荷の高さは、ヒッチコックの域に達する。しかし、主題に直結する痛々しさの感覚が本質的なものに感じられず、演技の痛々しさにとどまる。
ジェリー

常識的には生命感の象徴ともいうべき緑色がこの映画では死のイメージとして画面を支配する。その緑が支配する画面に対して青や赤や黄色の支配する画面が対等に拮抗するのか、相対的に弱く表現されてしまうかで、この映画の解釈は大きく変わるだろう。が、私にはそのどちらとも取れなかった。画面同士が中途半端に喧嘩して、全体のトーンを汚し主題を浮かび上がらせることに失敗したという気がしてならない。

次に、台詞について。脚本にはほとんど1行に1個はユーモラスな表現が書かれていたはずである。性愛と人間の攻撃性に関する深遠なテーマについて、いろいろな角度から登場人物たちが語り合いながらこの映画は進行するわけだが、生硬な喋りあいを少しでも中和して理解させやすくするためにユーモアが必要という着想までは間違っていない。問題は、原作にも認められるこのユーモアをそのまま映画に移植しようとしたことにある。これは無謀すぎた。どのような演技をさせても歯の浮くような台詞となった。文学作品としてなら許容できる台詞も生身の人間の演じる映画では不自然に響く。もっと原作から離れなければいけなかった、と私は思う。

(評価:★2)

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